日本のマンションのベランダには鉄格子が無い

2020年4月25日(土)

中国では多くの一般の家やマンションのベランダには必ず鉄格子が付けられているが日本には無かった。との記事が中国メディアの今日頭条に載っていました。
不動産購入意欲の高い中国人がさる日本でマンションを見学した時に驚いたそうで、
日本で購入する時に注意すべきとのコメントがあったと言います。
だがそれは否定的な内容ではありません。即ち現地の常識では、ベランダに防犯のため鉄格子の他、植物や物置代わりに使っている物で溢れており、容易に動かせない大きな物まで置くとあります。
日本ではマンションのベランダは共用部分なので勝手に改造ができない。避難できる構造になっていて、はみ出る物を置いたり、ペットを飼ったりできません。
従って、不便があっても隣接住戸の安全のため勝手に使えないことに日本人は納得している。また万が一の場合、鉄格子が無いのは避難できるため安全だと、公共意識の高さを称賛しているのだと解説しています。

確かに日本ではバルコニーは法的にも共有部分とされており、専用使用権はあるが部屋内の専有部分とは異なり販売面積には含まれません。
契約時には法律で重要事項として告知義務があり、契約書以外に文書(重要事項説明書)が交付されます。さらに管理規約にはこれも法規に基づいて、共有部分の権利と使用法などが詳しく記載され、所有者は住いの常識としても順守しています。
またバルコニーは床に垂直避難扉が設置され、隣接の隔壁は火災などの際、容易に壊せるよう決められていますから、万一の場合に逃げ出せる避難通路にもなります。
また窓にアルミ製の格子があっても、内側から外せる工夫がされているため安全。
最終の住戸引き渡しまでにはこれら設備検査を消防署が行ない、不備があれば入居できません。

ではベトナムではどうなっているのか。
HCM市内の一般住宅では、多くは防犯上の理由で窓には鉄格子が嵌められており、玄関はシャッター扉があって、特に夜間は閉じられます。また門のある家では門扉が頑丈な鉄で出来ていることが多く、天井に当る部分まで鉄格子にしてある。さらに家に入る際にも戸締り、門扉もしっかり施錠されるのです。
しかしそれでも殆どの人はバイクを家の中に入れます。玄関に置いておくと夜間になって門扉の錠を壊して盗まれるからです。これは被害者当人(私)が身をもって経験したこと。また犬もそう、犬泥棒が居て巧妙に鳴かせずに鎖を外して盗んで行く被害も多く、何処まですれば絶対に安全で安心できる、と言うものではありません。
さらにHEM(路地)の入口に鉄格子があって、夜は鍵を掛ける様になっている所もあり、住民以外は防犯上の理由で入れなくしている場所もあります。

怖いのは、空気窓の鉄格子の鉄筋を鉄鋸で切って家に侵入。テレビなどを盗んでいくこともありました。何と襲われた家へ二度目に侵入しようとして、たまたま娘と顔を合わせたため逃げたのです。裏が田んぼだったので侵入し易かったのですが、小柄な人物ならできなくはない。事なきを得たけれど、恐ろしくて転居しました。

マンション、此処ではアパートという呼称が一般的ですが、私の居た所は7区PMH。
5階建ての2階部分でした。だからエレベーターはありません。なぜEVの話かと言うと、此処では管理費以外にEVを使う際に幾らかの料金を取る場合や、カードをスキャンしなければ動かなくしている場合があります。
なお日本でいう毎月の修繕積立金はなく、契約時に一活支払いでしたが、将来とても足りるような額ではありません。これは修繕計画が無いからでもあります。
で、バルコニーですが、これを設計したのは中国の大手建設会社。曰く、ハーバードの出身者が担当だそうだが、本当なのか疑問。こんな設計などする訳がありません。
2面あったバルコニーの鉄格子は1m200ほどの高さでしかない。日本でいう東南北むきの角部屋なので道路側が空いています。しかし避難口や避難用隔壁はありませんから、非常時の安全を考慮しているとは言えません。
また当時、仕事で他の高層階アパートや戸建て住宅にも行きましたが、我が家と同じで方角や位置は別にして全面格子でなく、また一部のトイレや洗面周りの小窓はスライド式でこれも鉄格子はありません。
セキュリティーが24時間しっかりしているという事はありますが、ベナム人住民からもクレームがあったと聞いたことはありません。

さて、このバルコニー、契約書には販売(専有)面積に算入されています。そしてバルコニー部分の面積表示すらありませんでした。
また日本の様に壁芯での計算はせず、外面からの計算となっていました。上下水道管のためのパイプスペースも記載はなく、ガス設備や換気のダクトは此処にはない。
日本の様に購入時、床スラブやコンクリートの隔壁の説明なども一切ありません。
所変われば法律も変わるか、無い。と言うことです。

海外不動産は憧れ。購入を勧めるセミナーもあります。現地に日本人スタッフが居て安心して購入できるなどとしていますが、果たしてこういう現地の法や慣習を理解して説明しているのか?と考えます。

株式会社VACコンサルティング 顧問
(IBPC大阪 ベトナムアドバイザー)
木村秀生