英国の調査会社に拠るとベトナムの8月製造購買者景気指数は、前月から4,9ポイント下がり40,2と、3カ月連続で50を割り込んでいます。
またベトナム統計総局発表の8月工業生産指数は137,2で、前月より4,2、低下と下がり続けている。
数字が示す通り、明らかに工業団地での厳格な制限が生産活動に大きな影響を与えており、これは地場企業にとっても同じだが、外資系企業のように他国へのシフトが出来ません。
だがこれは全国一律ではなく地域ごとに明確に違いがあります。
南部地域は影響をもろに受けていて、感染者が最も多く工場も多いHCM市は前年同期比49,2%の落ち込み。隣接省のドンナイ省13,3%、ビンユン省12,6%となっており、感染者率とほぼ比例する。規制がある中部ダナン市は17,1%、ハノイ市で6,4%減少となっている。
だが規制がない市・省では、ハイフォン市が21,2%、ハナム省17,8%、クアンニン省17,5%上昇と真逆。大きな違いを見せています。
また業種別では主要輸出製品でもあるコンピュータ・電子製品が7%、材木・木製品6,8%、繊維製品が僅かに上昇したが、履物は28,3%、自動車部品3,1%減少だが、これは世界的に影響を及ぼしています。
なお国内向けは食品15,2%、自動車11,6%、バイクが11,3%と生産量が低下している。
世界的なサプライチェーンの構築を目指すベトナムにとって、感染拡大に拠る生産の低下は影を落とす原因となり、ワクチン以上の防護策はないと必死。
各国企業も高い関心を持っているとされ、成否はワクチンに委ねられているので接種目標を立て、経済復活へのシナリオも描いているがアジア圏では低い率にとどまっています。
商工省に拠れば外資系企業でベトナム以外の国・地域から原材料や部品を輸入しているのは、2016年に58,7%だったが、昨年は41,4%にまでなった。
また専門商社にこれらを委託している企業が、2016年の39%から昨年には26,8%に減少したと報じています。少しずつ国内調達が増え、すその産業は拡大してきたが、今回の事態は水を差す結果と残念がっている。
こうなると外資系企業は部品・原材料など地場企業に求める事はリスクとして避ける可能性が出てきます。
元来地場企業は製造能力に限界があり、品質にばらつきがあって担保されない
といった事情で多くを期待しておらず、供給を自国や価格が安く安定して大量の生産に応じられる中国企業にしていたのが実態。多くの地場企業は下請けに甘んじR&Dを積極的にしてこなかった。これが昨年から雲行きが怪しくなり、抜け切らない相変わらずの実態と課題がまた浮かび上がりました。
慌てたけれど、これまで基礎工業力の問題などで進出外資系企業と十分な意思疎通や関係構築、努力が出来ていなかった報いが如実に表れたと解せます。
だが前回に書いたが優秀な企業も存在。進出企業の支援を受けて成長し、委託製造を任せられる企業もある。こうした企業はほぼ大丈夫だが、多数の企業にとって試練は続きます。時流に乗りかけたが思わぬ伏兵にこのまま捩じ込まれるのか。見通しは甘かった。
感染防止と、一方で抱える大きな問題。サプライチェーンに乗っかれるのかは瀬戸際。政府の策に掛っていると思えます。
・日本企業の苦悩
日ごとに深刻度が増す外資系企業。現地社員を放っておけない日本企業は苦悩。
そう簡単に切り上げることはできない。小規模、あるいは自営で事業なりを行なっている邦人は徐々に限界を感じており、もはや資金が続かないと聞きます。せっかく描いた海外での雄飛。自己の所業で不祥事や失敗でないなら、身を切られる様に辛いのはよく理解できます。
9月に入ってHCM市人民委員会と企業代表がミーティングをしたと聞きます。
この中で家族を持つ方が注目したのが学校再開。一部を除き現地はオンライン授業をしているが、促進を謳っているとあります。教育は後回しでいつ再開か目途が付かないのが現状。一つに18歳以下のワクチン接種は対象外。接種が条件となっているが整合性は無い。また新学期はベトナムでは9月、だが日本は3月なのでこの事情を彼らは分かっていない。こんな状態なら帰国した方が良いとの考えが強くなったと言います。
工場を持つ日系企業。テレワークで凌げるならいい。南部では業種にも拠るが、従業員に感染者が出るともう壊滅的に近い操業停止。こうなると大手企業でもほぼ年内は回復できず、ワーカーにしても戻ってくるか分からない。それほど勤務意欲やロイヤリティーがある訳でないが、人が居ないと何もできない。
実際に多くの部品が生産と出荷停止、おまけに物流規制で動かず、日本でも多くの企業で部品不足が顕著に表れてきています。
ある現地法人は、親会社からの借り入れは国家銀行に届けないと営業外利益とされ課税されるので、手続きするために電話をした。ところが出てこない。
やむなくメールすると暫く休むと返事。こんな非常時なのにと訝ったが、この現実。こうなると生産拠点の見直しが論議される可能性も無いと言えない。
株式会社VACコンサルティング 顧問
(IBPC大阪 ベトナムアドバイザー)
木村秀生