冷凍食事品に味の素が参入 食生活の変化を捉えるとあるけれど

2024年10月21日(月)

現地報で上記のタイトル記事がありました。何に付けても時代は進化している。
これに拠るとベトナム市場に冷凍食品の新規参入が続いており、味の素は7月にギョーザを発売、日清製粉ウェルナも冷凍パスタを投入する方針だとか。
味の素は豚肉と鶏肉の入った餃子、6個入・35,000VNDと30個入りの2種をタイから輸入するが、ベトナムでの冷凍食品の販売は初めて挑戦する。
日本でも冷凍餃子の売り上はトップで、増々競争力を付けており、ベトナムでの事業も試食テストマーケティングの結果、かなりの自信を持っている様です。

実は同社が進出したのはかなり早い時期だが、長らく赤字に苦しんでいてようやく黒字に転換したと噂を聞いたことがある。
日本では超優良企業、なぜここまで黒字化が進まなかったのか良く解からないけれど、しかしベトナム人にも化学調味料を好まない人は結構いるのです。
この記事が出た日に前後して、現地報にあったのは日本人にもお馴染みになったPho、元来は北部の麺類だが結構化学調味料が使われているとありました。
理由は知らないが味を調える目的もあろうが、使いすぎると舌がピリピリしたとか下痢、気分が悪くなる、中には蕁麻疹が出たなどとある。好き嫌いでなく、これまで牛骨から取った本物のスープしでしか食べなかったのかも知れない。
HCM市で評判のPHO屋がある。知人の日本人宅の直ぐ近所。ここは何人もお連れしたけれど美味しいというが、ヘムからキッチンが見えるけどこういう調味料は使っていないようで自然の旨みだけの様だった。

同社は現地で社会貢献事業を積極的に展開、大学への寄付講座や学校給食の改善指導を行い、食文化への啓蒙や普及活動はかなり熱心に行なっているほどCSには関心が高くて熱心な企業と認識しています。
HCM市5区で水餃子が食べられるし、一時は1区にも出店していて、偶に行ったが、これは統一後、帰国しなかった中国人がレストランを始めたのです。
この店にも焼き餃子はあったけれど、皮が分厚くて余り美味ではなく、むしろ水餃子に軍配。またこれまでスーパーに冷凍の饅頭があったけれど焼き餃子は記憶にありません。という訳なので個人的には売れると感じます。

またパスタはイタリア系レストランがあったけれど、当時はポピュラーでなく、家庭でも余り作られなかったのだが、フライドチキンやハンバーガーの普及でケチャップなどの調味料を食する機会が増えたためポピュラーになるのは当然の成り行きです。
まだ準備中だが洋食の傾向は若者から拡がる。同社は日本から輸入する方針とかだが、実はこれまで業務用を販売してきたので、ある程度の実績があります。
今度は家庭用だが、これも成算はあると考えても正解かと思える。
ベトナムも粉モン文化。ただし伝統的には米粉の麵とかだが、パンなども実際普及してきているし、HCM市ではお好み焼きにタコ焼きもあって、現地の人も美味しいと喜んで食べるので、時代が変化した今、新しい小麦粉での粉もん文化が巻き起こることも考えられます。

さらに日系以外でも台湾系の調味料企業ベダン社が、冷凍スープや冷凍具材の販売に取り組んでいるとあります。特にメコンで養殖される魚で作ったツミレの冷凍団子スープが好評。これはこれまでにも鍋に良く入れられているから全く問題は無い。同社はベトナムで冷凍食品を製造して世界各国へ輸出する。
メコンの水産業者は視察に訪問すると、必ず日本企業との提携とか製品の輸出を希望していた。そういう意味では日本企業は出遅れ気味か。
しかしこの会社汚水垂れ流しで問題とされ罰金を科されたほど。いわば台湾のアジのモトで、長くこれを製造していました。だがベトナムの所得が向上していったのが、こうした食品へも波及してきたわけです。

こうした冷凍食品の動きの背景だが、都市部で共稼ぎや単身世帯が増加傾向にあり、また冷凍設備を完備した小売店やコールドチェーンの普及があるという。
大型ショッピングモール・日系イオンで試食会を開いた結果、期待以上の成果だったとあり、認知度を上げてゆく方針とか。

元々ベトナムにも冷凍食品が無かった訳ではありません。多くは無いけれど、輸入品とベトナム製品がありました。しかし一般家庭には冷蔵庫など無い。
所得から見て買える道理が無く、一部の家族しか購入しても保存できない訳なのでなかなか普及しなかった。おまけに販売する担当者も自宅に冷蔵庫がない。
だから温度管理が全くできず、冷媒管には氷がビッシリと張り付いており多くの食品は半分溶けかけ状態。上司も知識がないのだから叱れるわけがない。
今では笑話で済むけれども、誰も知らないのではしょうがないのです。

知人宅は訪問するといつも大好きなチャーヨーを手作りしてくれた。具も多く美味しいのだが、準備と手間が結構大変。しかし何時の日だったか溶けかけの冷凍春巻きを買って来て揚げてくれたけれど具は少ない。さらに一時帰国する時に持ってきてくれたのがこの冷凍春巻き。敢えて何も言わなかったけれど、溶ければ全く意味がないのを理解していなかったのだろうか。
普及が考えられる要因はコールドチェーンの普及、低温物流が整備されなければ配送が出来ない。また冷凍物流倉庫も無ければ不可能。これまではダラットからの野菜輸送だってバスに混載していたため暑くて傷みがかなり酷かった。
折角の商品なのに売れる訳がない。こういう事が世の中に罷り通っていました。

社会と食生活の変化、低温物流の整備と家庭では冷蔵庫、さらに電子レンジが普及したこと。これらが冷凍食品の売れる要因になったと筆者は考えるのです。
ベトナム家庭の多くは、とりわけ朝は外食が多く。始業時間が速いことも一因。
バイクを道端に停め、お粥やパンなどを買って行き、会社で食べることが多い。
手抜きとまで言えないが、簡単で手早く料理が出来る便利さ、また冷凍すれば保存期間が長いということが世の中で評価され世間が追いついてきた訳です。
さらにここ数年間でのCOVID-19が原因に拠る自宅での滞在期間が長かった事。
これも拍車をかけたのは紛れもない事実なのです。

さらに小売業の形態変化、スーパーから大型ショッピングセンター、コンビニエンスストア、これが地方にまで急速に増えているのも冷凍食品が売れる大きな市場拡大機会となっていると思ってよく、急速に発展する可能性は高い。
アメリカの調査会社は、ベトナムの冷凍食品の市場規模は2022年の17億5553万ドルから年率8,72%で成長し、2028年には29億ドルに成長すると算出。しかし一方で今後の課題として栄養価や添加物、保存料に関する消費者の懸念の払拭と物流の一層の発展が必要としている。これ等の疑念に関して日本企業は長い経験があり先行。かなり有利に展開できると考えられます。

問題も無くはない。料理をする機会が少ないと各家庭伝承の味は消え、地域の伝統食文化も衰退。毎度の冷食となればこれまでの家庭像が崩れて冷めて行く。
料理の出来ない女が増え男の手料理がなくなる。どんな材料と調味料を使うか、下拵えをし、茹でるか焼くのかなど経験をしなくなれば、便利さと引き換えに人間の舌はバカになると考えていい。それ以上に考える力や創造性もなくなるのだが、何よりの誰かために料理するという気持ちや心遣い、失敗しても愛情の欠片もない、これを家事からの解放と言っていい訳などありません。
日本の様に食品会社がこぞって冷凍食品に進出するとなれば競争力が強い企業の寡占化が起きる。技術力は高くなるが、特色が無いなど差別化できなければ消えてゆく。食品添加物が増えて食の安全性とかけ離れた加工品になる可能性もある。冷凍食品が普及すれば全国どこでも味の均質・平準化が行われる。
安定供給とリーズナブルな価格は大きな魅力、増々進化するに違いない期待感はあるが、果たして企業がこうした問題、社会的責任をどう考えているのか。

株式会社VACコンサルティング 顧問
(IBPC大阪 ベトナムアドバイザー)
木村秀生