不動産を早く買わないと損をするのか?

2024年3月8日(金)

現地で報じられた記事。タイトルを見れば、成るほど購入を待機している人には興味がありそう。だが誰に何を言いたいのか良く解からず、二回目のバブルが終った現在、ベトナム不動産市場に関しては動きが極めて弱く住宅が売れていない状況の中、読者は買い時なのか、待つべきかを知りたい筈なのに、金価格の上昇と不動産価格の下落を対比して、損得を論じている滑稽さがあります。
今回のバブルで不動産価格は軒並み下落。不動産へ資金を拠出したが、儲け損ねてドブに捨てた投資家の失敗話の瓦版。過剰な不動産投資を批判するとか、政府・行政の怠慢を追求するとか、原因究明するならまだしも、尻切れトンボ。
この国は自由主義国でなく、あくまでも社会主義国家だが、とてつもない大金持ちの投資家が居る。単に自己の利益のために、ただでさえ都市部では住宅が不足し、高騰を続け、もはや一般の賃金労働者は住宅など買えない所まで来ているにも関わらず利益のために買い続けた。だが思いの外、換金処分できなかった事実と、資金繰りと利払いに苦しんでいる実態がある。金満家と言っても売買のタイミングを見誤ればとんでもない事態に陥ると指摘したげです。
これらはこの国の一側面で、あり得ないはずのあぶく銭を取得する国内投資家が一部にいる。経済へ再投資をして金が循環すれば国民へ再分配され豊かさが増すけれど、これを問うている訳でもありません。また何ら策を講じなかった政府に対する痛烈批判とか、こういう利己主義者の存在が格差拡大を助長している内容の検証ならまだしも、そうした素振りや提言などもありません。
良い見方をするのなら、不動産の考え方への警鐘であり、現在市場は価格下落を続けているが、需要と供給、また市場でのテストとして短期的変動が生じる可能性はまだあるという。従って住宅を購入しようと計画している素人は慎重にとの御宣託だが、残念ながら一般人は常に蚊帳の外に置かれるのです。
一方、多くの市民は上昇トレンドが長引くことを前提に、少しの値動きに慌てて反応するし、価格が下がる可能性など考慮しない。逆に僅かな下落は更なる大幅な下落となることに繋がる。こうした考え方は、値上がり時に衝動買いし、価格が下落した時に売るなど、早々と損失を出すことに繋がる場合があるので注意すべきという。不動産購入には冷静さと合理的な思考を長期的に維持するべきとの見解を披露。これは何処の国でも共通する出遅れた一般大衆の心理で殊更ベトナムに限った現象でない。素人が欲を出せば失敗するだけの話でしかありません。

この筆者の仲間が住宅購入について意見を交わしていた。そこである人は価格が下がるのを待っていたけれど、結局は値上がりしてしまったので大損した。不動産市場では、時間の経過とともに価格は上昇する。一時的な価格の失速や停滞があっても、後に急上昇するのは単にセットアップであるとしている。
早く買うことに拠って儲けが保証された不動産投資を過度に美化しないことが重要だとするけれど、下落が続く中だが、値の上る時期はまた訪れるとする。
価格決定には様々な要素が複雑に絡むので、十羽ひとからげは整合性に欠ける。
富裕層は何故不動産を買う?住宅が不足しているのに急いで買い増しするか?彼の富を誇示するため?価格が上がっても余裕があるし、反対に価格が下がればさらに恩恵を被る事が出来るともいう。だが答えは簡単明瞭。単に儲けたい、富を増やしたいだけの成金趣味のゲーム感覚。こんな理念の無い者は真の投資家ではない。今回の不動産不況の一断面。投資家は立ち往生していると書くが、殆どの人に無縁、無意味な与太話に過ぎず煽ってはいけない。
富裕な投資家が不動産市場の全体を支配しているのは誤解で、市場自体が価格を決定する。富裕層は価格を操作しようとしても一般の購入者が従わなければ失敗する。市場は大口投資家同士が激しく競い合っており、自分が金持ちだと思い込み市場に不用意に介入すると大変な目に遭うのだが、最たるものが株式投資。大口ファンドでさえ損失を回避できないとある。だが何れの市場も未熟で健全であるとは言い難く、金融と不動産の関連性とか、この国の特殊性も分からずに投稿をした評論家と称する人物の低レベルを露呈しているだけです。
預金口座を持つ成人が昨年やっと78%だし、金融商品への個人投資は少なく、不動産情報開示など不十分で不透明。そこに来て法律も未整備、不動産仲介者の資格制度もやっと実施するとあるので、こうした記事が物件を購入しようとする事情の分からない人へ指南役の意味があるのかも知れないが、迷惑千万。
経済成長と都市化、人口の増加が続くベトナムと、日本を比することに無理があるけれど、一般論として、住居はその地、その場所で、本来必要があるからこそ買うもの。結果として値上がりするか否か考えて購入するものでないが、万一の場合、売りやすい要因がある。こういう物件を選ぶのは必要不可欠です。
だが資金を持つ投資家が金融商品を購入、バブルに乗じ値上益を不動産に投資。さらに莫大な利益を上げる操作。さらに法規制や融資を政治的に巧みに利用、まさに悪代官と結託して悪徳商人が真っ当な商売を阻害している。この図式と変わりないのが中国の不動産破綻の原因。ともすれば国家に体制も危険水域。ベトナムも同じ貉になる危険を孕む可能性があり、先進国に習い規制は必要。
日本もうかうかできない。不動産高騰が続く超過密都市東京。人口増加が続くも老朽化が進むマンションは建て替えも出来ず、入居者は高齢化で権利関係は複雑化、処理できず廃墟の如く朽ちて行く。埋め立て地に多い超高層は砂上の楼閣。大地震がくれば液状化現象で一発アウト、ドミノの連続が待っている。こんな危険を考えず、分散も無く、ひたすら巨大化の連鎖が続くのは恐怖です。

株式会社VACコンサルティング 顧問
(IBPC大阪 ベトナムアドバイザー)
木村秀生