東南アジアといえば、「若者であふれ、高齢化とは程遠い地域」。そういったイメージがあるかもしれません。
ところが、タイやベトナムでは既に高齢化が始まっており、人口の増加が鈍化してきています。
意外に思われた方もいるでしょうが、これが現実です。
ベトナムでは既に高齢化が始まっている
ベトナムでは2015年に、総人口に占める65歳以上の割合(高齢化率)が7%を超え、「高齢化社会」に突入したとされています。2030~2035年ごろには14%を超え、「高齢社会」を迎えると推測されています。
日本は現在、高齢化率が28%を超え「超高齢社会」に入っています。高齢化率7%を超えたのが1970年、14%を超えたのが1994年であり、高齢化社会から高齢社会に達するまでに24年を要しています。
一方、ベトナムでは、日本を上回るペースで高齢化が進んでいます。
さらに、人口ボーナス期(総人口に占める生産年齢人口が増え続ける状態)の終了年は、2041年と予測されています。
今後、生産年齢人口の減少と高齢者人口の増加によって、少子高齢化の時代を迎えることが予想されます。
ベトナムで介護施設運営を目指す
高齢化に加え、核家族化が進んでいるベトナムには、介護施設がほとんどなく、家族による介護が一般的です。しかし、介護知識に乏しい家族が多く、食事や移動などを介助していても、要介護者の健康状態を悪化させてしまうケースもよくあるそうです。
加えて、介護サービスや制度も十分に整備されていません。
こうしたことから、ベトナムでは今後、介護サービスの需要が高まると見込まれています。
青森県むつ市で特別養護老人ホームなどを運営する社会福祉法人「青森社会福祉振興団」は、2019年10月、ベトナム中部フエにある国立総合病院「ベトナム保健省フエ中央病院」と協働事業の覚書を交わし、2022年をめどに日本型の介護施設を運営することを明らかにしました。
介護施設はフエ中央病院の一角を改修して設置し、規模は100床程度となります。
施設で働くスタッフには、同病院に勤務するベトナム人10人程度を充てます。技能実習生として、青森、宮城、福島の介護施設で2~3年働きながら、基本的な介護技術や日本語などを学んでもらう取り組みも計画されています。
日本では、2025年までに約34万人の介護スタッフが不足するという試算もあります。
同法人は、日本の介護技術を海外に普及させる一方で、介護人材を確保するルートを開拓したい考えでいます。