ベトナムの不動産近況 売買でトラブル多発 現地の人も騙される怖さ

2021年2月12日(金)

知り合いの日本人。どうしても帰国せざるを得ない事態になり、これまで住んでいたHCM市内の自宅(一戸建て)を売る必要に迫られました。
歳を重ね、海外在住年数も長くなってくると、何かしら通らなければならない様々な壁が誰にも出て来るものだが、どう決断するかは各々の事情に拠ります。
COVID-19禍の中、彼はなんとか飛行機の手配ができ、成田で2週間の隔離も問題無く、ようやく実家に戻ることが出来て一安心。家族の在留許可もとれて一安心という所でした。後は片付けと手続きの為に一旦どう戻るかです。
しかし家を売る算段を家人(ベトナム人)に任せていたところ、なんと人伝に紹介された仲介するというブローカーへ先に5千ドルを渡し、しかも権利証であるピンクブックまで預けてしまったといいます。これには知人がビックリ。どうしてそうなったのか事情は詳しく聞かないが、当然あり得ない。
安心していたけれども購入客の紹介など全く無い。オカシイと気付いて何とかピンクブックは取り返したというけれど、お金は戻ってこないと言います。
幾らベトナムでも手数料は残金決済をする時に、売主が手続きに必要な書類とピンクブックと共に媒介業者に払うもので、そもそも金と大切な権利証を先に渡す事などありません。一般の人が一生の内に何度も経験があるものでは無く、家人はこんなものだと思っていた痛恨のミス。彼は何も手が打てずもどかしい限りだが、詐欺師は山ほどいて現地の人も騙されているのです。

不動産関連法規や制度が整備されていない現地の事情が、こういう事件が起きて初めて露呈します。
日本人は日本の常識が普通と考えてしまうが、難解な不動産取引で知識のない素人が法的に守られる事は決して無い怖さがあります。一応看板を挙げている業者もあるけれど、単なる客付けであり建築や取引全般に関する知識がない人は多く、信用ならない場合もある。これは現地事情に詳しくなく不動産・建築などの知識がない、素人日本人担当者もいるので注意が必要です。
また何らかの事情で売ることになった場合。私がアパートを売った時は外国人なので、日本で用意しなければならない書類、現地で翻訳や外事局や公証役場で認証手続きがあるため余計に時間が掛かります。また個人で契約しても売る時には妻との共有財産になるため両名の立ち合いと署名、書類が要ります。
しかしこれを知らない人は沢山います。従って現地に来なくてはいけないため意外と時間と費用が掛かることになるのを知らない業者も多いので注意。
またパスポートもチェックされ、当人かどうか確認されますから適当に奥さんのなりすましは出来ません。

・日本人が関わった投資トラブル

海外で不動産を持つのが夢という方は多いと思います。ベトナムでは2015年7月1日から外国人は、制限はあるが外国人が買う認可を取ったアパートと戸建て住戸を買えるようになりました。
進出企業、経営者や在住者が購入するのは良いとして、投資目的で日本の分譲マンションと同じと思っている方は問題が多く止める方が良い。
購入対象は新築物件のみで、中古の場合は、外国人が購入した物件を当局の許可を得て使用権の残留期間を引継ぐ場合のみです。

・注意すべきは

日本国内でも投資セミナーがあるとか、現地で日本人の担当者がいて安心だという事を書いている広告もあるが、現地企業の委託(日本の法律的では媒介)。
だが地理も建築に関しても詳しくない人物が現地採用という形で仕事をしている場合もあるし、歩合給であることも一般的なので邦人の誼という曖昧さだけで安心はできない。また現地の人が親切そうに接してくるのも危険があるとみるのが良い。要は金目当てなので結果として騙される事もある。手付金を騙し取るとか、酷い場合は自分名義にしてしまう場合もある様で、こうなると何とも手立てはありません。弁護士を立てようが訴えようが解決は無理に近い。
現地の大手デベロッパーでも工期、即ち引き渡し期日が守られる事は殆どあり得ない。少々の遅延でなく数か月にも及ぶ事もあり、これに拠り委託を受けた(仲介業者)が、買主から解約を申し出ても応じない場合があると聞きます。
開発業者の直接契約ではないため、仲介業者は知らぬ存ぜぬで、応じないどころか金が無いから返金しないことがある。結局は泣き寝入りで丸々損失という羽目になる可能性があっても事件は海外ゆえに表には出ません。契約書を読んでも(説明して貰っても)良く解らないし、解約条項があったとしても信用は出来ません。私の場合は英語とベトナム語だが、正本はベトナム語でした。
日本のでは殆ど入学時期など節目に合わせ、逆算して完工検査等々や施主検査があり、説明会があって入居となります。しかし此処ではそんなことはお構いなし、遅れるのが当たり前。またそれによる遅延損害の賠償などはありません。
日本よりもはるかに立派なモデルルームもありますが、工事内容は日本と比べて余程の物件でない限り納得でき兼ねるほどレベルは低く、スケルトンの場合は内装や家具、設備などに費用が別途かかる可能性があります。
賃貸用にと思って購入しても、ベトナムでは企業が要求するレッドインボイスが発効できないと借りたい人が居ても出来ません。これは簡単ではなく、業務を代行するという会社もある様なので事情をヒアリングすること、また税率は不動産の場合は複雑なので確認が必要。日本への送金も難しいのです。

株式会社VACコンサルティング 顧問
(IBPC大阪 ベトナムアドバイザー)
木村秀生