ベトナムで日本並の品質の牛肉が商機

2022年5月6日(金)

国内乳製品最大手ビナミルクが、「日本産牛肉の品質を持つ」肉牛の生産に乗り出すとの記事がありました。
日本の商社、双日の出資を得て合弁会社を設立し、年内に農場や加工場の整備を行い、23年春にも稼働して出荷を始めるとあります。投資額は約5億ドルを見込んでおり、ビナミルクが51%、双日は49%。
北部のビンフック省にあるビナミルクが保有する農地70Hrを活用、年間3万頭を処理して1万トンの牛肉を生産。事業が軌道に乗れば中部、南部にも牧場を整備し牛肉の加工販売を行う。
この背景には中間所得層が増え、外食比率と高級志向が高くなっているからで絶好の好機。新事業モデルと多角化する一つの要因とあります。
ベトナムの牛肉消費量は年間65万トン。この内輸入肉が20万トン、日本産の牛肉は人気がある。今回日本の高度な生産技術を活用しリーズナブルな価格で提供するとあるが、日本でも人気が高い黒毛和牛か、それともWAGYUなのか明確でありません。だが日本から繁殖のため精子を持ち出せば犯罪になる。大手優良企業なら尚更出来る訳がない。どういう表現をするのか見もの。越種和牛とか?
数年前にHCM市郊外のクチで同じような計画があった。しかしいつの間にか霧散してしまい噂も一切聞かない。今回は大手企業同士、時期も熟しているので間違いなかろうが、日本品質と言えどう見ても曖昧さは免れない。

・ベトナムの牛肉

ベトナム産牛肉は赤身でヘルシーなのは結構だが、脂身が無く硬くて食べ易いと言えるものでない。これを鍋にする場合、酢を入れるが臭みが取れ柔らかくなると言うけれど、スライサーが無いためしゃぶしゃぶの様に肉を薄く切っていません。生活の知恵ではあるが、思ったほどではない。
来日したベトナム人、すき焼きよりもしゃぶしゃぶを食べたいと言う。本物の黒毛和牛は値が張るけれど柔らかい。野菜などもたっぷり、ポン酢、胡麻ダレ、食べ放題+うどんにも感激してくれました。他にもKOBEBEEFを食べたくて家族で神戸まで行った人も居る。こんな体験を一旦すると日本の牛肉に病みつき、ベトナムでは高価だが買ってしまう。
食べたことが無いと言うので冷凍にして土産に持ち還ってこともある。初めて口にした日本の牛肉、余りの旨さにビックリしたと言ったが、恐らく誰もが感じる素直な気持ちでしょう。
しかし食文化を容易に真似ることはできません。
かつてハノイで減農薬野菜を栽培し日本人家庭に販売していた日本人の友人。薄きり肉の需要があるとスライスして販売していたが、日本人にとっては何かと食べやすく評判でいつも売切れたと話していた。
一般のスーパーで売られているのはアメリカ産かオーストラリア産が主。日本と違って塊のままケースに入れてあり、頃合いを指で指し計ってもらいます。価格表示は1㎏単位で表示してある。これを余り切れない包丁で切るから余計に厚くなるので美味しくないと感じる日本人。
またミンチ肉は置いていないので、この塊を目の前でミンチにして貰うか自分で叩くしかない。豚も同じ、価格は変わりません。

・焼肉の普及

市内1区、ティーサック通りにあったアメリカン・ステーキ店ではアメリカ産牛肉を使ったステーキ、ハンバーグが食べられたが当時は高級品。一般市民の口に入るものではなかったのです。この近くに日本人が経営する神戸ビーフの小さなハウスがあったが長く続きませんでした。とてもではないが時期尚早。商売は現地事情を読み、時流を観なければいけない。
そこへ登場したのが大阪福島区に本店がある浦江亭。2004年だったと記憶するが進出当初は普通の店だった。直ぐに人気店となり瞬く間に数店舗に増え、よく利用した。日本人だけではなくベトナム人にも大人気。食事を共にする時、一番喜ばれたのです。今は6店舗ほどか、プノンペンにも進出。
これに続いて、他の日系、ベトナム、韓国系も焼肉店を出したが、どの店にも一応食味に行ったが、とうてい適わない。あるベトナム人は日本の企業の要請で出資した合弁先社長になった。意気揚々、高級志向だったが殆ど客は来ない。ランチでさえ食種は良かったが1年持ちませんでした。
だがこの10年で外食産業は3倍以上に成長。所得が増えるのに並行して高級店が人気だとか。良い所に着眼したものです。
日本でも焼肉がブームになって、焼肉のタレが売れ始めた時期があり、これはGDPと関係があると言う。ベトナムも3000ドルを超え、食生活は洋風化の傾向。若者にはファストフードが人気で抵抗なく脂濃いものが受け入れられます。牛肉消費は増えてゆく、商機であることには違いありません。

・肉を洗うベトナム

ベトナムの台所、牛肉を使う際には先ず水道水で肉をしっかりと洗っている。
旨みが流れるのではと心配するが、汚れを落とすとある。多分市場や路上店で蠅や埃がつくのを見て、不衛生だと感じるからと思うのだが。

・本格参入への問題点

記事に拠ると、すでに先行して販路開拓のためYUKI BEEFとブランドを付け、日本をイメージしたパッケージで北海道産牛肉を輸入し、HCM市内のイオンで昨年12月から1パック250グラムが15~45万ドンで販売している。
しかし歴史と技術にノウハウを持つ日本。ようやく始まったと言えるベトナムの肉牛生産。乳製品にしろ美味しい生乳が一部でしか飲めず、加工乳が多いのが実情。
生産牧場の表示やどのような飼料を与えたかなど、酪農技術、生産履歴、個体識別、流通過程の明確化や、品質を表示して消費者が如何に確認できるか。
こうした安全な高品質製品を届けるため、ベトナムでも安心基準をつくる事で企業姿勢が問われ評価される時代。商機ととらえて新規参入を予定する他社と明確なブランド化や差別化が可能になります。
規制や基準はできておらずまだ始まったばかり。何処が先鞭をつけるかだが、最も大切なのは単純に旨いこと。

・人気がある日本産食品

2021年度の日本の農産品輸出額が1兆2385億円となり、初の1兆円の大台を超えたが、前年の25,6%増で急速に増え9年連増で増加しています。
この中で牛肉は85,9%増の536億円だったと報じています。だが輸出用に回れば日本人の口には入らない心配もあるが、生産者が潤い若い人が従事する様になれば結果として日本の農水産業や加工業が安定し、自国で食料が賄えるようになる可能性も考えられます。
輸出額が最も多いのは中国2224千億円、次いで香港2190億円。三位はアメリカ1683億円だが41,2%と急拡大。
日本産の食品人気が根強いのは美味しくて安全。改良を重ね、なお手間をかけて品質を管理しているのは日本人ならで努力の賜物。隣国の様にパクリ専門で、イチャモンを付けるのは得意、いいとこ盗りをしてもなお開き直りする国とは大きく異なるが、若い人は彼の国の食品に夢中とか。自国食品を見直せ。

株式会社VACコンサルティング 顧問
(IBPC大阪 ベトナムアドバイザー)
木村秀生