2022年のGDP成長目標

2022年5月24日(火)

政府は今年の経済社会発展計画に関して、国会での議決を経て目標を下記の様に定めています。
① GDP国内生産 6~6,5%(国民一人当たり3900ドル)
② GDPに占める製造加工業の割合 25,5%~25,8%
③ 消費者物価指数上昇率 4,0%
これを達成するため、生産と経営の促進、輸出促進、公共投資の推進、PPP方式でのインフラ整備促進(要は金が無いから合同で事業をしようとする訳)。
取り分け、南北高速道路、ロンタン新空港など国家的重要インフラ案件の整備に注力する方針。また労働市場の安定化と雇用創出、国民の生活水準の向上を挙げています。基盤の弱い銀行の再編成を行ない、非効率プロジェクトや企業の再編成など含め、金融面でのカツを入れる考えもある。

・海外の銀行などが出したベトナムの今年の成長率予測

世界銀行は昨年10月、ベトナムの2022年の成長予測を6,6%と発表。これはタイ、マレーシア、インドネシア、フィリッピンの中で最もベトナムが高い数字を得ています。スタンダード銀行も7%に達する見込みだとし、順調に経済が回復していると、楽観的な見方をしています。
香港上海銀行は6,5%との予想。この理由は昨年10~12月・第四半期の成長率が5,2%となり、以前に予想した3,8%を超えていた。米国ブルームバーグも3,9%としていたが、これを上回った事。生産活動がかなり改善され、サービス業にも明るい見通しがある。昨年度の輸出額が前年比で22,6%増加したこと。これをベースにしてさらに上向くとしました。
またインフレ上昇率の予想については、2,7%から3%に上方修正しています。
但しベトナム国家銀行は4%と見積もっているが、特に問題にはならないとしています。この理由、ガソリンなどの燃料が高騰、小売りも1,3%上昇。また経済活性化策で消費者マインドも改善するとの見通しを示しています。
長年ベトナムで活動している英国プライス・ウオーター・ハウスクーパース(PwC・国際会計事務所)は、6~6,5%の成長予測。FDIが好調に推移するとみる、RCEPなどベトナムが積極的に進める自由貿易が促進される見込み。世界的企業のFDIが増加傾向でCOVID-19収束後の景気回復を見込んでいます。
大筋の予測が6~6,5%。多少の差があるとしてもこの範囲が妥当と言えます。取り分けデジタル化の推進が一つの鍵になる可能性もあり、大きな関心と投資を受けておりあらゆる分野で加速しています。これには政府が積極的に関り、2030年にはGDPの30%を占めるとされ、これからのベトナムの社会・経済を背負って行くことが期待される程で注視する必要があります。

・経済は好調だが課題を解決できないまま

22年~23年にかけてベトナム経済復活に関して政府は需要と供給の両面から支援し、財政金融政策、公共投資、経済再構築の課題には柔軟に実施するとしています。また成長はまだこの先も続くが、そこに問題がないとは言い切れないともしている。
それは何か。新規起業する人や企業新設も多いが、事業停止も多い。このため前年1~11月にかけて目標に挙げた数字の73,8%しか達成していなかったとしています。公共投資も前年の8,7%減。
さらに総輸出額が増加したと言うが、これも一種のマジック。国内企業のそれは26,4%で減少するどころか、増えているのが実態。その成長率も11%ほどで、外資系企業の20%に比べて極めて低いと指摘されている。
すなわち生産性が低く、付加価値のある製品を自国企業は造れない。多くの高精密部品の製造技術もノウハウもない現実。
さらに原材料の自国調達率が極めて低く、中国などからの輸入に頼っており、一向に解消できる筋道が見つからないまま甘んじているのです。
未だに貿易黒字も外貨保有高の全てが外国投資で支えられている、これがベトナム経済成長も実態であり盲点だが認識できる人は少ないのです。ならば農業・水産業と加工業はどうかと言えば、胡椒や珈琲に米など世界的な農産物はある。だが高品質かと言えば絶対的に保証できるとまでは行かないし、加工品としての価値も自国企業で開発研究が出来るまでも行かず、外資企業の受託に支えられる。マーケティング戦略にも弱く折機会を逃すケースが多い。こうした課題を解決して行かないとなりません。

・好調な個人消費 地方に拡大するネットショッピング

ネット販売が好調。だがこれまでは殆ど大都市圏でしか機能しなかったのです。
フェイスブック社と米国のコンサルタント会社が行った調査でネット販売での商品購入が前年に比べ件数が40%、金額ベースで50%増加したことが分ったとあります。
これは地方にも波及し、ネットを見て商品を知った人が81%、実際に購入に結びついたのが56%になったとある。
販促キャンペーンであるオンライン・フライデー、ブラック・フライデーや、11月11日のメガ・デーなど、デジタル経済化を進める政府機関や商工省等様々な団体が催したイベントとの成果であると言いさらに拡大するとしている。
インターネットで購入する人の3000万人が地方農村部に居住するとなっていて、実に45%を占めるまでになりました。一昔前は予想できなかったこと。
2025年までの間に年平均7%の成長をすると予測され、これは都市部の4%よりも高く人口比から見て商機は地方で決まり。
今年のテト、買い物をネットで行った人が対象者の79%になったとあります。
もはや購入の選択肢として欠かせないものになりました。また今後利用するとした人も約90%だったとあり、売り上げを増やしたい中小企業にとって大きなチャンス、商品ラインの充実や高品質化がより求められます。
こうした傾向を受け、物流企業は大型物流拠点と地域デポを整備し、デジタル技術を利用した迅速で確実な配送業務ができる様にしたと報じられています。
今後はモノだけではなくレジャーや旅行と言った商品にまで及び、ターゲットも一般市民から、主に中間層や富裕層を顧客に拡大する事で、利用客と企業がマッチングする。こんな質的変化も考えられる。
ベトナムが2045年までに高所得国になるとする経済見通しを立て、達成する目標を持つが、これは中間層の増加と国内消費が鍵であるとし、世界銀行はその支援を行うとまで表明しています。
こうした状況下で、ベトナム政府はVAT=付加価値税を2月1日より、10%から8%にする措置を講じました。わずか2%、されど2%。政令によると、VATが10%になっている商品を2%減免し、今年度の12月31日まで適用されるとなっている。但し一部対象外の商品があり、これには通信、金融関係、不動産、金属製品、鉱業製品、コークス、精製石油、特別消費税の対象商品。サービスが含まれるが日常生活をする上で大きな消費加速要因となります。

株式会社VACコンサルティング 顧問
(IBPC大阪 ベトナムアドバイザー)
木村秀生