発展進化しているベトナムのIT関連分野②

2022年4月14日(木)

・ベトナムの改革が進むと言う評価

世界知的所有権機関というのがあるという。この機関が昨年に行った世界各国のイノベーション能力を分析したところ、ベトナムは132ヵ国中42位であったとされます。前々回に書いたけれど、中所得国という定義があるベトナム。この中所得国の中で突出しているとあり、機関では改革促進という面で他国の手本になり得ると評価しています。
グローバル・イノベーション・インデックス 2021年版でも、ベトナムは対象国・地域の中で最も改革が進歩的であった50のひとつに挙げられ、中国、インド、フィリッピンなどと並んで今後数年間で世界の状況を大きく変革させる可能性があるとしています。特にベトナムは積極的な推進力で改革を継続して進めている先進国の仲間入りを果たすだろうと述べています。
しかし国家という枠の中で順位を捉えるとそうなのだが、実質的には政策とか行政が頑張ったというよりも、民間企業の、また新しい世代の能力のある若い人達が世界の潮流を読む能力、実務面で実行力とR&Dに拠るものが原動力になっていると考えます。
COVID-19の思わぬ副産物というか、都市封鎖や移動制限で小売業の電子商取引が進み、これが要因となって経済のデジタル化が進もうとしています。
こうなると国家にとっては確かに有益で海外へ国内企業が進出する機会だが、残念ながら、先程から述べてきた様々な格差が一層拡大するのではないかとの懸念も出て来ます。
もの作りを重点政策として継続してきて、そこから浮かび上がった課題は多い。だからと言ってこれまで行ってきた裾野産業の育成を放棄するものではなく、技術やノウハウの導入も止めるものでは無いと考えます。また国内でのR&Dをしないというものでもありません。
誉の国産初EV車?が昨年12月国内予約顧客に引き渡され、アメリカ市場に上陸しようとする時期に研究拠点を海外に造る訳は何を意味するのか。企業がグローバル化を目指すに際して、自国のブランド信頼度が不十分であるのを否めないからなのか。
世界のサプライチェーンをベトナムにという期待が良くも悪くも国内部品企業の脆弱さを露呈したが、ではもの作りを簡単に諦めるのか?これはできません。
最先端の機器が無ければ情報通信ソフトは機能しないことが明白です。
ならば何をどのように交通整理して情報技術を結びつけるのか。これは行政間でも横断的に、また具体的に論じられていません。夫々の論議が別々にあがるが両輪のバランスが採れてこそ最大限の効果が期待できる筈。

・データセンターが稼働

HCM市でベトナム最大級のデータセンターが稼働します。これに拠って国内のデジタル化が加速するとの期待があります。
これは国内情報通信大手のひとつ、CMCテクノロジー・グループが手掛けるもので、この背景にネット通販やデジタルバンキングなどの普及、企業データのクラウド化とか業務の効率化ニーズがあるとされ、これをサポートして改革推進に繋がるとされている。
ベトナムはデータベース市場が経済成長に伴い急増するため、2026年までに毎年14,6%以上の成長を予測する。並行して世界の十大新興国でのデータセンター市場に成長するとの見方があり、この稼働が切掛けとなって情報通信企業がデータセンターと事務機能を持つ新しいビジネスの出現が考えられます。

・その他 フィンテックなどでもデジタル化が広がる傾向

ベトナムは銀行や証券、保険などの金融部門で、フィンテックがアセアン地域で3位となりました。このため成長企業向けと、リスク回避したアセアン市場へ戦略転換を図る動きがあるとの報道。アセアンはフィンテック企業向け投資が増加し、シンガポール一国でほぼ半分を占め、二位インドネシアが26%。ベトナムは約3億ドルを調達し11%、電子決済VNPay向けが2億5千万ドル、電子決済アプリMoMoへの1億ドルが主であったと報じられています。
このように電子決済向けが大幅に伸びており、ハイテク企業、暗号資産の順に拡大しているが、既に消費者の90%がデジタル通貨や電子決済を利用するか、利用計画があるとして、成長が期待されている。
フィンテックは海外投資家にも関心を呼ぶとされ、国内では既に100社以上が電子決済と個人融資向け分野で稼働。しかし法的な位置付けや枠組みは無く、地方での利用が難しいなどの課題は解決されていません。
また競争が激化すればトラブルの発生する可能性も高いため、今後の動向には注意が必要だとベトナム銀行協会は見ています。先行するシンガポールは企業が信頼性と透明性、責任をもって新ビジネスへ挑戦。アセアンで主導権を持つとし、このため新技術導入と管理スキル向上を目指すとあります。
また農業分野でも農家や農産関連企業のデジタル化を支援するため、アメリカのVISAが商工省・デジタル経済局と提携。電子商取引や電子決済の導入、事業運営のデジタル化を支援し、農業生産の供給チェーンの近代化を推進する考え。基盤が整った農家などへはロジテックス、顧客成長ソリューションを活用したビジネスを拡大する手法を提供する事になったと言う。こうして農業分野にもIT技術を使ったスマート化以外に、ビジネス参加へデジタルが活躍します。

株式会社VACコンサルティング 顧問
(IBPC大阪 ベトナムアドバイザー)
木村秀生