土地法改正

2026年7月24日(金)

ベトナムには不動産に関するニュースを毎日報じているサイトがあり、これは全国のデベロッパーが開発するプロジェクトから、国内不動産に関する様々な事情や法律についてタイムリーで詳細な記事にしており誰もが見る事が出来る。
すでにご存じの通りベトナムの土地は公有制。即ち私的所有することは出来ず、使用権のみとなっている。土地は国のモノに思えるが、全人民が持っているとするものの形として国家が管理している訳。だが自由に売買できるし民間業者が建物を建てて販売も出来る、許認可を得て大規模工場用地を造成し外国企業に期限付きで賃貸することも可能。もちろん地域によって価値に違いがあり、価格は大きく異なっているのだが、所有権との違いは我々には殆ど分りません。
戦争終結後、HCM市の郊外には人が住んでおらず荒れ果てたまま。こうした所に勝手に家を建てたとか、ある人は安い価格でそうした家を買ったとしても、当然その権利を示す書類(以前はレッドブックなどと称した)はなく、ある時、市は一斉にこうした土地を収用したことがあります。さらに市中心の住宅など、持ち主が戦争で亡くなったとか、家族共々海外へ逃げたとか、で不在。さらにこれらの住宅などを北の軍高官が勝手に自分のモノとして略奪したことも実際にあり、爾後は子や孫に相続している実態があります。
様々な事情で多くの土地は誰のモノなのか実際は分らない。書類やデータなどは無く、また法律も不十分、不備だったので、地方から来て一生住めると安堵して折角手にしたけれど失くした人が多く居たことも事実です。こうした地区に知人の親戚がなけなしの金を叩いて古く狭かったけれど、サイゴン河向かい岸に買った家だが、数年後には無くなっており、そこに大規模開発が行われた。
またビンタン区、タンダー地区に行く途中、本道からわき道に入ったところもかつては荒れ放題の地。此処の平屋をレッドブックが無いのを承知で買ったが、僅か数年後、サイゴンツーリストが周辺地域を大規模開発するということで、これは地元で記事になったが同じ様にすっかり姿を消してしまった。
こうした事例は道路拡幅や沼地を工業団地や住宅開発などでも頻繁にあったが、7区PMH新都市開発は国内最大規模を誇った。経済成長で一帯を大手企業が整備するため事業免許を得てアパートや戸建て住宅の建設に着手したのです。
こうした背景には成長が続き、地方から職を求めて都市へ人口流入が加速した。都心部ではもう空き地が無く、さらに商業ビルへと転換するため住宅地は郊外へと広がって行った結果で、北はクチ、南は7区~ニャーベー地区、西は国道1号に沿って、東はハノイ道路沿いに(初の地下鉄はほぼ平行)市域は徐々に拡大してゆくことになりました。また不動産開発業者が急速に現れて肥大化していったことにも原因が求められる、と筆者は一連の流れを見ていて考えます。

・2024年の土地法改正

様々な問題や矛盾があったため、土地法は二年前に幾つかの改正が時代に即した形で行われたのだが、それには大きく10項目があげられている。
これには新不動産業法、新住宅法も同様に変更されているが、土地法の改正は規制のために滞っている多くのプロジェクトを早期に解決し、地場不動産業界の関係者を救済する目的もあったと言われているが決して十分ではなかった。
改正の例としては、個人の農地使用権の限度拡大。土地価格枠の廃止、これは急騰する不動産価格の調整を失くすこと。また土地価格表が毎年作成すること、土地評価に関する規定を追加し借地料に関する規定を追加。土地使用者は本人のみで家族世帯に交付しない。レッドブックなどの呼称は止め、「土地使用権、土地に付随する資産の所有権証明書」と正確な名称にすること。非農地使用税を目的に応じた土地価格表に基づくとした。不動産譲渡による課税所得の確定方法にも土地価格表に基づく。土地に関する紛争の仲裁に関する権限を追加。国の借地料の支払方法に関する変更。借地料の支払方法の選定の選択。商業住宅の投資案件へ合意制度の実施。することであり、旧法では時代の流れに追い付けず不備が生じたとするわけで、特に土地価格表の整備が毎年行われることでいわゆる土地鑑定価格が明らかになる。開発に関しての要件と業者の使用料支払いが、外国企業の参入に関してどう適用されるかが定義付けされ、紛争の解決手段も国内人民裁判所で行なうと明確に記載したのです。

・農業環境省が土地法の改正を提案

今回の改正ではまだ不備とされる件に関して改正を提案しているとあります。
前回改正でも不十分であった幾つかの条項を修正、補足する法案を、実施する過程で生じた問題を排除すること、経済発展と新しく自治体が再編成されたため、そのモデルの要件を満たすとして報告書を政府に提出したとあります。
農業環境省によると、地方の分権化の必要性は、土地制度にも改善する必要性が生じ、このため安定性、一貫性、長期性を確保するため法制化が必要であるとするけれど、急変する不動産に即した総合的、統一性があると思えない。
一つには新時代の国家発展の要件を満たすための規制、また二桁の経済成長を目指すとする。また地方分権化、二段階地方自治モデルに基づく権限の割振り、土地に関する行政手続き改革に関する規則であるとしている。
前回行われた土地価格、価格表、価格調整係数も含まれ、時代の流れに応じた、土地利用課徴金、土地賃料、土地の回収、補償、支援と再定住。使用権登録と発行。土地利用計画、目的変更に関する件。区画の分割と統合。紛争の解決、自治体レベルでの計画についての規則の補足を提案している。
また稲作耕地の権利と義務、特定の土地に関する使用に関する事項を改正することが含まれ、これに伴いこれまでの地区、郷、といった用語が置き換えられるとか、廃止することがあるとしており、複雑で理解できないことが多かったけれど、これらの呼称は社会主義国の土地ならではのこと。もちろん中国文化の影響は色濃く残るが、歴史的にみて自然派生してきたのはないかと感じます。
起草した案では土地取引に伴う様々な原因で、当局が決定を下していない案件について、土地利用権を持つ者に補償、再定住の権利のみは有することを提案。
これで投機性を抑制し引き締め効果が得られ、透明性のある公正さを確保することが確保できるとしている。これは過去10年間で多くの土地の譲渡取引が法的問題に直面したとあり、中には手書きの書類で売買された場合があるが、これに利用権を認めないとし、これに伴う取引、抵当権設定などは制限されるというが、全てが場当たり的で価格高騰に効果はないと考えられる。
この辺りの記載内容は、筆者が日本で実際に不動産取引に従事していた者からすれば、自由に売買できる状況と余りにも大きく実務とかけ離れ、何を指しているのか複雑でよく理解できません。それよりも売買に伴う登記手続きに関して専門的な法律を整備し、知識を持った人物に国家として資格を与えて、実務に関わる者と役所間で手心とか、不必要な金銭の授受が無いようにしなければ透明性の確保など絶対に無理筋。法律の不備を言うのなら実際に経験した立場から言えば必ず意味不明の金の動きがあり、しかも公的には資質の無い人物が介在して移転手続きを行うという前近代的で杜撰な取引全体を中止しなければなりません。即ち全てに役所に関わる人物が居て、彼らに手続きを委ねなくてはならない積年の不透明な方法を排除して、明確な手続きフローを完成させる必要が先にあるだが、結局は癒着した構造を変えられないだけの話に終わる。

・土地データベースの完成開始を指示

ドゥン副首相は首相指令に基づき、地積マッピングの進捗を加速させるために昼夜を問わずして資源の集中を指示。土地の登録記録を収集し、土地に関するデータベース構築を行うように求めたとあります。
首相指令以前は国内に1億600万区画が存在していたと農業環境副大臣が述べたけれど、データがある土地は6280万区画に過ぎず、ではこれまで役所はどんな仕事をしたのか。実態は地域毎に処理されており、取引や登記された不動産取引に関するデータの存在は不十分でしなかったという極めていい加減であったと実態を語っているわけです。しかも正しく状況が書かれているのは2350万区画しかなく、残りは再認証する必要があり、全くデータ上に記載などなく建設もされていない土地が4320万区画もあるというのです。
測量技術を持った人物が土地の確定測量を行い、これを然るべき役所が保管し管理するというシステムがこの国に無かったのだから驚く限りです。
まして住宅用地や農地にしてもその用途などの区分があるのに拘わらず、整理されていないという事になる。これでは課税すると言っても、根拠が乏しい。また近年は土地の鑑定評価も出ているけれど、これは何を根拠にするのかだが、あくまでも近隣物件の取引(価格)事例によるものであるとしか思えません。
急激に都市化、また急成長は止まらない。この状況ではもっと早く国が動いてしかるべく所轄官庁が不動産を管理して置かねばならなかったけれど、二度も不動産バブルを経験しながら、また外国の事例も沢山あったけれど、何の経験もなかったように放置していただけのことで進歩していません。
不動産は法律や建築などの豊富な知識が必要で、さらに取引経験が豊富、そうした上で国が資格を与えるべきなのだがこの国にはそれが無かった。単に講習があっただけで、筆者の事業パートナーも受講、これで不動産業が出来ました。在所の有力者が取引に関与し、役所での登記手続きもこの素人の人物が片手間に行っていただけが実態。土地購入者も買った物件の状況は分らない。事実、筆者が住んでいた家の近くに池があった。此処を埋め立てたのは良いけれど、埋め立てて直ぐに家を建て分譲。すると一年も経たない内に門が傾いていた。
家は基礎に杭を打っているのでまだ良いけれど、日本ではこういう事はしない。結局は補償など無く売ったもん勝ち、購入者は泣き寝入りして諦めるだけです。
ではデータを作るという意気込みは分かるけれど、どういう調査を行おうとしているのか、これが記事にはありません。もし土地の測量から始めるとなれば簡単な仕事ではありません。どれだけ時間が掛かるのかさえ分らず、またこの測量をするだけの能力がある者でさえ十分に確保出来るものでもありません。
農業環境省に拠ると、作成すべきデータは測定される見込みとあり、800万ヘクタールを予定しており、実に4300万区画になるとしている。これに対してHCM市、ハノイ市、ダナン市の地方の代表は指令のスケジュールに沿って任務を完了するとし、これを確認したと報じているが掛け声だけで終わるか。
副首相は各省庁、部門、地方自治体の多くは努力をしているけれど、進捗度は依然として遅く要件を満たしていないとした。今年2026年度末までに完了しなければならないと語ったとあるが、指令で求められた19のタスクを見直し、具体的な進捗表を作成して毎月の更新を求め、責任を明確にするように、昼夜を問わずキャンペーンを開始する様に要請したとあります。副首相はまた公安省、科学技術省と緊密に連携、土地データが国の人口データベースと連携して認証され、情報セキュリティの安全要件を満たすことを提案したとある。安全保障から見て当然なすべきだが、日本は私的所有権故に地主の勝手し放題。
土地は公有制をとっていても、その実、何も整理されておらず、実態が全く不明であったとする笑い話にもならないが、一歩前進の様相が見えかけて来ました。
今年中に完成なんて、出来もしない冗談を言っている場合では無かろうに。

株式会社VACコンサルティング 顧問
(IBPC大阪 ベトナムアドバイザー)
木村秀生