2035年までに海外から2000人以上の科学者を採用する計画

2026年6月23日(火)

昨年11月に書いたコラムに、ベトナム政府はテクノロジー、イノベーション、DXで優秀な人材を確保するため、科学者に住宅や車両を提供する、と新しい政令を公布。また最大4か月分のボーナス、医療パッケージ、移転手当、また外国人なら年に一度家族共々帰国する費用を提供するとし、市民権を申請すれば資格も与えることを法令で条件を定めた、としたことを書きました。
この対象者は特許取得済の発明者や共同研究者、また海外の有名な研究機関、大学、企業で豊富な経験と専門知識を持つ専門家、または国際的な賞を受賞したとか、効果が証明された研究成果を出した人。あるいは世界トップ200にランクインした大学で博士号を取得、著名な学術誌に10本の国際論文を出した人。だそうだが、誰がこの程度の待遇でわざわざ先端技術未開の国に行くのだろうか?明らかに高度な専門研究人材が居ない実態を証明しているだけ。
また現地紙はエンジニア5万人不足。政府が描く2030年までの半導体産業人材育成。2050年を見据えたオリエンテーションでは少なくても5万人のエンジニアと15,000人のIC設計者、35,000人の製造・パッケージングのエンジニアを育成するとした。
世界の半導体市場は2030年までに1兆ドル規模の巨大産業に発展するとの予測があってベトナムは何としてでも乗り遅れたくない。しかし地元経済紙に拠るとベトナムの半導体産業は初期段階であり、実は高度なスキルを持つ人材がいない極めて深刻な状況に直面しているという。サムスン、エヌビディア、クアルコムなど大手企業は戦略的に捉えて進出しているが、地場企業のFPT、VITTELなどがサプライチェーンに参加を始めている段階でしかない。
では半年経過した現在の状況はどうなったか。現地紙に拠るとチン首相は外国の専門家や海外に居るベトナム人研究者を招き、国内の高等教育機関で教育、研究、就労を行うための国家プログラムを承認したと伝えたとある。

今年になって技術者、科学者が不足しているというにも拘わらず、ベトナムはさらに懲りもせず国立宇宙センターを開設したが、威信をかけたというよりも時期尚早の感がある。なお衛星の打ち上げはこれまで日本に委託していました。
このプログラムは優秀な国際的な人材、また海外在住のベトナム人を採用し、活用維持するためのメカニズムと政策を開発し効果的な実施を行うことを目指すとしているのです。即ち昨年にぶち上げた優遇策は思い通りに進まなかったわけで、此処に新たに外国に住んでいるベトナム人の科学者に目を付けた、という事の他なりません。考え方は良いとして、破格ともいえる待遇であっても外国人研究者がワザワザ不完全な研究体制や環境、下支えをする技術者が整ってもいない状況の中で誰がリスクを冒してまで来るのか。こんな簡単な論理が分かっていないのだから目出度い限り。これでは自信過剰か世界から見て井の中の蛙状態としか思えません。
言わば仕切り直しなのだが、今回は目指すところ、国の科学技術能力を強化、そのため高度人材の育成を行い、革新力を高め教育と研究における国際統合を促進することを焦っている。
この記事に関した読者の意見は、まず教育に力を入れるべきとあったのだが、政府が考えるより一般人の方が実情を理解しているように思える。しかし科学技術力を高めることはラム書記長の目指すところであり、国家発展のために何としてでも実現しなければならないという大命題でもあるのです。

・海外から2000人を超える科学技術者を採用

いくら書記長の考えと言っても、国内の現況で科学技術者を得ることは難しい。かといって高度人材育成など焦った処で、僅かの期間で出来る訳がありません。
そこで先ずは海外の人材を破格の好待遇で迎えるとしたのです。
機会はいくらでもあったと考えるのだが、明らかに教育政策のミスでしかない。
だが間に合わない。そこで遅ればせながら2035年までに国内教育システムを世界標準にまで引き上げる目標を設定した取り組みを始めたという次第です。
この内容であるが、教育・訓練、科学研究、技術移転、特に戦略かつ中核的な技術分野で画期的な成果を生み出す重要な課題を解決、主導できる優秀な人材30名を専門家と科学者として採用する計画とある。それはそうでしょう、幾らなんでも他人の褌で何時までも相撲を取ろうというバカは居ない。これまで外国に甘んじのさばっていただけの役人を、ラム氏は好としないのは当然。
様々な試みを行い、第14回党大会が終って、国会では新首相を選出したが、これも如何にこの国を先進国にしようとする意気込みに違いありません。

此処に至るまでの繋ぎとして、大学や職業訓練教育機関で常勤職500人もの専門家の招聘を目指しているが、これらの人物を最先端の科学技術分野で研究するグループ長とか、リーダー、ディレクターとする役職を担うとした。
また1500人の専門家、科学者などがベトナムの機関と定期的に会合、またはリモートで教育、研究、協力するとしています。
こうした目標を達成するため、世界各国から招聘した専門家などと繋ぐ強固なシステムとデータベースを構築。信頼できる学術研究の拠点をつくり、コミュニケーションの強化を行う施設と環境整備を行うとするが、果たして思い通りに計画が進められるのか。結局は絵に描いた餅になり、何時まで経っても自助努力が見えないだけの借り物で国力を維持することになるのでしょうか?

株式会社VACコンサルティング 顧問
(IBPC大阪 ベトナムアドバイザー)
木村秀生