ベトナムの農水産物輸出国のなかで、地理的にも近い利点がある中国は、人口が13億人を超えており、市場規模が大きく、かつ量的・質的に潜在的購買力が高い国と位置付けています。
町の市場やスーパーにある一部の根物類は中国から入って来たもので、大きなズタ袋には漢字で生産地が書かれていました。中には化学肥料のやり過ぎで地場産より大きいけれど、内皮に黒い粉が残っていたり、保健所が検査をすると残留農薬が基準より高いものまで売っていたりで、よく洗わないと!思いつつ選んだ記憶があります。
だがこのところ中国への輸出が増えています。これは消費経済が好調であり、食生活様式の変化にも依るもの。中国の果実として有名で、楊貴妃が好んだとされるライチ。さすがに冷凍ものと違って生は美味しいね!なんて感激しても、何のことは無い、中国で食べた果実はベトナム北部で採れたもの。産地偽装なのかもしれませんが言わなければ分からない。他の南国フルーツの検疫も日本の様に厳しくありません。
主食の米も輸入が急増するとみられます。ベトナムは世界第3位の米輸出国。2018年には600万トン、約30億ドルを越える輸出を行ないましたが、政府は生産調整をして高品質化を行い、美味しい米の輸出を増やす方針を打ち出しました。すなわち量より質を訴求し、輸出額を増やすためです。
高ランク米や多品種、銘柄米、特別栽培米は無いけれど、優秀な研究者が居るので将来的に可能。ようやく気付いた改革と考えますが、既に日本種米は何種類か栽培され地元で売られ輸出もされています。さらにソクチャン省での新種試験栽培では期待以上の好成績。土壌や気候は合うようです。
米輸出は穀倉地帯であるメコンデルタ地域へ大きな潤いをもたらすため、中国の食品展示会に商談のためミッションを送っている位。中でもドンタップ省の輸出額は昨年10億ドル。多くの企業が中国側と協力関係を結び、輸出が急増すると見込んだ省政府もバックアップ。他の農産物にも拡大しています。
だが一部にカンボジアから河川を利用し、ベトナムに密輸入した米もあるため混入しない様、厳格な管理が必要です。
ベトナム人は元々、米の栽培発祥地であったという潮州近辺から南下してきたルーツをもつ民族が主。米作りに適した紅河流域に定住したと伝承され、その遺伝子は継承されています。
因みにすしの原型は豚肉の発酵食。雲南地方の照葉樹林文化地域発祥で、ハレの日に食べた貴重なもの。これが日本に伝わり鮒ずしの様な米と魚を発酵させ熟れ鮨になった、こういう学説があり、酒を始めとして世界有数の発酵文化と技術を持つに至っています。
また水産物は13億ドル相当を輸出して中国の水産物輸入国3位。これは中国の水産資源量が減少している背景がある事と、人口増加と豊かになったため。これまで食べなかった海の魚も食べる様になり、食糧輸入を増やさないと追いつかない。メコンデルタの池で養殖される淡水魚や蝦は加工され、欧米や日本に出荷されますが、今後は中国にも大量に輸出される可能性は高い。こうなると心配なのが魚資源の取り合いと価格上昇です。さらにコーヒー、ナッツなどの嗜好食品、果物も増えると考えます。
こうした中、ベトナム産農水産物の需要は高いとしても、中国側の品質要求も上がり、輸入規則と技術基準が厳しくなってきており、ベトナム企業も輸出を増やすため、品質強化と製品の包装や保管施設などの整備対策を急いでいます。
株式会社VACコンサルティング 顧問
(IBPC大阪 ベトナムアドバイザー)
木村秀生