ベトナムの声放送のニュースに拠ると、同国の木工品輸出はCOVID-19下にも拘わらず好調、年初から7ヵ月間の木材・木工品の輸出統計で約73億2千万ドルと前年同期比9,6%の増加となっています。また木材以外の林産物は5億ドルで22%の増加であったと報じていました。
これ等の製品の輸出先はアメリカ、中国、日本が主で、この上位3ヵ国で77%以上を占めているとされます。
ベトナムの木材・木工品輸出はASEANトップで、アジア2位。また世界で5位となっているというから驚きの順位。この所連続して二桁成長を達成しているとも書かれていますが、状況が良く掴めません。
この10年の間に継続してEU向けに製造しているF社は家具や建具を輸出していますが、社長に拠るとこの会社はEU向けに絞り2017年から証明書を発給できる木材だけを使っており、EVFTAを早くから見越した対策と現地の要求を満たすだけの見極め、この前から準備していたと言います。
また輸出拡大を考えアメリカ向けの需要に応じるための製品の生産と、原産地証明に応じられる態勢を確保したとあります。
この様な積極的な事業展開を企業がする中、林業総局は今年年間の木材関係の輸出は125億ドルに達するとの予測を立てており、こうした好調な背景には、
木工・家具製品、集成材が豊かである事。企業がデジタル化を図り、世界的に感染が拡大する中でオンライン貿易への転換を進めた事。など適切なビジネスモデルへの変更を行ってきたと自信たっぷりの表現をしています。
・ベトナムの木工製品のレベルと限界
ベトナムの家具は優秀と言いたげな記事ですが、幾つかの問題点を感じます。
HCM市内にも何社かの積み木などの玩具、木工品や家具製作会社があって、これ等は地場企業として創業地で事業を行っていました。しかし製造・製作にあたって粉塵(おが屑や)塗装の匂いが酷く集塵機で回収を行ったが、昔は何もない地域であったものの急激な都市化に拠り人が郊外にまで押し寄せ周囲がドンドン開発され、何とも不合理な話だが、当局は移転を迫っていたと言う。
我々のローカル企業も、インテリア部門を作り内外装工事などをしていたため、機械を買って内装に使う木工品、机・椅子、ベッド、収納家具等をニャーベーで作っていました。これに使用するのは多くは集成材。日本のような針葉樹や広葉樹は無いため、日本ではごく普通に使う樫やブナ、桜に檜、杉など使えないので種類は限られ素材を活かす事も出来ないのが実情。スプルスや米檜など杢モノはカナダ、アメリカ等から入って来るので高くて簡単には使えない。
事務所で使う机等も集成材なので重たく、水に浸かると膨らみ二度と使えない。
便利なのはキットなので現場で組み立てるだけ。運搬費も安く付くのみです。
日本の家具屋にもベトナム製の集成材製品が売られているが、目玉商品にする安価なモノ。塗装しても使う材料がまる判りですから売れていないのが実情。
また日本の通信販売で売られている炬燵などの製品の多くは台湾企業が早くから着目、加工して日本に輸出していましたが、これはゴム材でもうゴムが採れなくなった廃材を利用して加工。原価はタダみたいなもの。因みに住友林業はゴム材をチップに加工する工場を稼働させています。
他にはシステムキッチン。これは日本の会社が現地生産して輸出しているが、ノーブランド。ドアも一見丈夫だが乾燥が十分でなく反りが出てきました。
ベトナムは戦争中に、多くの山は米軍の枯葉剤の散布で禿山となり伐採禁止。中部ではラオスから山道を通ってベトナムに大きな丸い一本の木が運ばれていました。数年前から国境で検問が強化され、違法伐採とラオスからの木材輸入が禁止されたのです。知人は早くにこれに目を付けて木材をカットして製品化。大儲けをした時期もあったと聞きます。
こんな状況なので米中貿易摩擦がチャンスと捉えて輸出拡大意欲は良いけれど、三大市場の他、FTAなどの恩恵を受けてインド、ロシア、カナダ、韓国などを有望市場とみるが、高級品は造れないのが現実と思います。
・アメリカがベトナムを為替操作調査 制裁を視野にして
輸出が好調で貿易黒字と外貨準備高が増えるベトナム。中でもアメリカは完全な不均衡で黒字の源泉と言ってもいい位。2019年度は約560億ドルもの対ベトナム貿易赤字で前年より40%も増加。今後一層増えるであろうという不満があるみられます。そこでいよいよ米通商代表部はベトナムの為替操作がアメリカに悪影響を及ぼしたと調査開始を発表。不公正と判断すれば追加関税を含む制裁措置を講じるとします。即ち輸出を促進するために当局による為替介入を頻繁に行ない、通貨安に誘導しているとし不透明を指摘。事実過去には赤字になれば直ぐに切り下げはしょっちゅうありました。調査は財務省と協力して行うが、先に述べた木材の違法伐採に触れ、これがアメリカに輸出されたことも調査するとしています。中国に代ってベトナムがサプライヤーとなる事を見越し、安価な製品の輸入増加を懸念しているのが見え見えです。
株式会社VACコンサルティング 顧問
(IBPC大阪 ベトナムアドバイザー)
木村秀生