ベトナムには希土類に加え世界中が憧れる鉱物の宝庫がある

2026年7月2日(木)

つい3か月前のコラムにベトナムは希土類の宝庫、と記しました。政府は重要な鉱物資源であり、戦略物資として国家の管理下に置き、法律の改正や通達を発令すること、また資源の全国的調査を行ってデータベースを作成し、探査と試掘を行うことなど、戦略鉱物産業の発展と基盤を築く必要があるとした。
また地場企業に付いては十分な採掘や処理などの技術が確立されていないとし、課題を解決して戦略的自立性に貢献する事、財政と投資、国家と官民協力および投資家による開発、高度で適切な技術を習得すること、官民協力にはDXに基づくスマートマネジメントを導入すること、を指示したとあります。
工業国家を目指してきたけれど、この所の発見でこの国は鉱物資源国家として世界有数の埋蔵量を持つことになった訳です。

経済記事にはベトナムは鉱物資源の宝庫で、鉱物によって埋蔵量は世界最大、中国、アメリカの合計の4倍にも相当する物があるとしています。

・ボーキサイト

アルミニウムの原料になるボーキサイト。アメリカ地質調査所の2024年の発表によるとベトナムの埋蔵量は約31万トン、これはギニアの74億トン、オーストラリアの35億トンに次ぐ世界3位とある。中国でさえ7億トン弱、アメリカは2千万トンでしかないが、元々ベトナムにある事は知られていたアルミニウムは建設資材、輸送、電力、ハイテク産業においては重要であり、アルマイトやアルミナの生産に必要とされるが、工業貿易省に拠るとベトナムのボーキサイトは主に中央高原地帯で産出されるが高品質だとしています。
また自然資源環境省ではベトナムには2種類のボーキサイトがあり、ひとつは堆積起源に拠るものでハザン省など北部に分布している。もう一つの種類とはラテライトの風化によるもので良好な採掘条件下にある。特に旧ダクノン省は国内最大の埋蔵量を持つと云われ、省の面積の約三分の一という2396平方キロに亘って42億トンが埋蔵されているとし、これは国全体の57%に及ぶと省の工業貿易部が評価しています。
旧ダクノン省に、ビントアン省、ラムドン省が合併して、現ラムドン省に統合されたが、旧ビントアン省にもボーキサイトが埋まっているが、この他にも6億トンのチタン資源を有し、国内92%を誇っているとしています。
またこの他にも数百という鉱物資源、非金属鉱石、珪砂、ジルコン、錫、金鉱に鉱泉鉱床がある。また海域には大規模な石油、ガス田もあって、政府はこの地域を国立石油ガスセンターとして開発する計画があるという。

・世界三位のタングステン埋蔵量

これもアメリカ地質調査所のレポ-トに拠るけれど、ベトナムは中国、ロシアに次いで世界三位の埋蔵量があるとされ、北部タイグエン省は国内最大という90%を誇っていると云われます。
タングステンは金属の中でも最も高い硬度と融点を持っており、一般的に電球のフィラメントに使われているのは多くの方がご存じのはず。
この特性から切削工具、超硬合金類、宇宙航空部品や防衛産業、石油・ガス、再生エネルギーなどには絶対的に不可欠な材料となっている訳です。
また半導体チップ、電子デバイスなど多くのハイテク製品にも使われるもので、戦略的に重要な素材となっている。
こうした事情から、世界のサプライチェーンの安全保障に影響を与えるほどの物質とも云われ、そのため供給が中断されるとか何らかの事情で世界的に供給が滞るとなれば価格は即時に反応するとされるのです。
生産するのに必要な、中間材料としてアンモニウムパラタングスタットという物質の価格が今年1月に過去最高と言われる程に高騰しました。
この理由だが、採掘と加工を実質的に支配する中国が昨年から輸出管理措置を講じたため輸出前に許可申請を行う必要がある。また中国政府は国内15社を輸出対象に任じたとあり、国際市場への供給管理が強化されるという訳。
このため輸出量は40%も減少、だが一方で需要が急増しているため、激しい競争になっていると現地記事にある。

そこに浮上したのがベトナム。前のコラムに書いたマサン社が持つ鉱山は中国以外では世界最大と言われ、33%を供給できる能力があるとされています。
このため同社の収益は急増、価格は今年初頭には昨年の2倍以上にもなる過去最高となったが、今年はさらに上昇すると見られており、同社の株価もピークを更新して推移している。
エネルギーやデジタル化などで需要はこれから増える一方の世界的な戦略鉱物資源。ベトナム政府は経済的に重要というだけでなく、これまで国内で資源を調達できないとされ、その多くを輸入してきた国から、今度は重要鉱物を世界に供給する資源国家という立場へ変わろうとしています。
だがこれほど世界的な埋蔵量を誇る割には、鉱物や地質学、冶金や金属を専攻する専門の学部を持つ大学は無く、また専門家は政府にも大学教員にもいるということを聞いたことはありません。
地味な仕事であるが極めて重要な学問の領域であるので、早急に専門性の高い人材の養成を図る必要があると考えられるのだが、このような緊迫した状況になっても政府、あるいは教育訓練省が動く気配はなく、まさにおっとり刀。

・ニッケル

一般的に知られるのは硬貨に使われているニッケルだが、今最も必要とされているのが、電気自動車に使われる大容量バッテリーに使われるリチウムイオン電池の製造において重要な成分となっていると云われます。バッテリーの構造内でニッケルの割合を増やすことでエネルギー密度が向上、運行できる距離が延びると共にバッテリー寿命が延びるとされている。
このため国際エネルギー機関は、電気自動車が世界の自動車産業を改革し石油消費量を大幅に削減しているとしました。加えてニッケルを含むバッテリーの生産に必要な鉱物の需要も今後数年の間で急増すると予想しているのです。
ベトナムにはタインホア省が国内最大の埋蔵量を誇っているとされ、この地域で300万トン以上の資源がある。またソンラ省に42万トン強、 カオバン省には14万トン程度の埋蔵量があるとされる合計で360万トンが確認され、またベトナムのニッケルの特徴として様々な鉱物に存在しており、これはタインホア省のコディンクロム鉱山に主にみられる。
世界に比べると埋蔵量は絶対的に多いと言えないけれど、国内の自動車産業、ニッケルの製造は二重の利益をもたらしており、再生可能エネルギーの開発をももたらす貴重な天然資源であるには違いはありません。

しかしニッケルは経済的に重要であるだけでなく、戦略資源として分類される価値があり、アメリカ地質研究所では国家の安全保障に不可欠な資源であり、サプライチェーンが脆弱であるため50の重要鉱物のひとつに挙げています。
こうしたことからベトナム政府は、ニッケルの価値と可能性を充分に認識しており、昨年には金、銅、モリブデンなどと共に鉱石の探査、採掘、加工に利用計画を発表。この計画とは先進技術の適用、付加価値の向上、そして開発過程における環境保護の要件確保を強調しているとしている。
現在希土類について中国が主な生産を行っているが、この採掘から製造に至るまでの工程では環境汚染があるとされています。これを踏まえたものとして、政府はこの方針に関し、企業は大規模な鉱山開発には深層処理と併せて同時に投資をすることを奨励しています。
ベトナム政府の計画によると、2025年には118,000トンを採掘して、8,000~11,000トンの生産を行っているとしました。

さらに注目すべき鉱物だが、内企業PCIグループは国内で最大の埋蔵量を持つとされるカオバン省の銅鉱山の採掘権を保有しており、此処をタンファット工業が管理、その推定埋蔵量は1,400万トンあるとされる。年間60万トンを処理、稼働率は70%というが他に新たに発見される可能性もあります。

株式会社VACコンサルティング 顧問
(IBPC大阪 ベトナムアドバイザー)
木村秀生