袖の下はベトナムの文化?

2019年4月20日(土)

ベトナムでは、中秋節に、ビジネスパートナーや政府当局に対して、菓子(月餅)を贈る習慣があります。また、旧正月(テト)にも、お祝いの贈り物を渡す習慣があります。これを怠ると、ビジネスに支障を来すことさえあります。
キーパーソンとその家族へのプレゼントや、重要な案件を獲得するための取引先に対する接待など、同国では、贈答や接待は日常的に行われています。

こうした慣習に対して、日系企業の担当者の中には、相手方に「ひとつよろしく」という思いを伝える手段ではあるものの、「賄賂」との境界に悩み、罪の意識にさいなまれる方もいるようです。

今回は、ベトナムでの贈答・接待の慣習と、贈賄罪の対象について、ご紹介します。

ビジネスツールとして欠かせない贈答・接待

ベトナムでは、ビジネスを行ううえで、贈答・接待が重要な役割を果たしています。

企業同士の取引においては、担当者レベルでの贈答・接待は日常茶飯事。税関、警察、許認可当局などの公務員であっても同様です。日系企業でも、「通関手続のとき、通関職員から、窓口で通関をする見返りと称して、不当な金品の贈与を要求された」「ベトナム政府の高官に面会を申し込んだところ、タブレット型端末を数十台持ってくるように要求された」といった事例があり、贈答・接待を巡る問題は、枚挙にいとまがありません。公務員によるこうした要求が絶えないのは、給料が安いことにも一因があるようです。

刑法改正で、民間企業の職員も贈賄罪の対象に

ベトナムでは、贈収賄は、犯罪として刑法に規定されています。

ベトナム刑法によれば、従来、公務員と国営企業の職員のみが、収賄者として贈賄罪が適用される対象でした。
ところが、2018年1月から施行された改正法では、公務員・国営企業職員だけでなく、民間企業の職員に対する賄賂についても処罰の対象となりました。
このため、取引先の民間企業担当者にキックバックを渡したり、顧客民間企業の管理職を接待したりすることは、贈賄罪に問われる可能性があり、注意が必要です。

民間企業同士の賄賂については、改正法の施行からまだ間もないことや、実際の取り締まりは困難であることから、当分の間は形骸化する可能性があります。しかし、法で明文化されていますので、悪質なケースは、摘発される危険性があります。今後、当局の対応を見守っていく必要があるでしょう。