今回は農業分野に関する事項に触れてみますが、ひとつの食イベントがあった。
今年で3回目となるベトナム最大級の食の祭典「フレーバーズ・ベトナム」がハノイ市とHCM市で開催。1月~4月まで4カ月間に亘って展開されました。
食文化の活性化や、特に今年などは飲食店の支援と回復が主目的にあります。
食品や飲料に関する会議やセミナー等も含まれ、また若手の料理人らが料理の腕を振るうイベント「ライジングシェフ・チャレンジ」なる競技や、優秀店を表彰する「ベトナム・レストラン&バー・アワード」。実際に一般の人が人気店の料理風景を見ながらユニークな食事体験が出来るなどなど盛りだくさん企画。
こういう伝統食を見直す様な実も華もある企画ができるまでになったと感じる。
今回は500社以上、5000人が直接参加というが、さらに多くの人が参加できるようオンライン形式でプログラムが用意され、これには1500万人もの人が自由に随時訪問できる大規模な催事であったと報じています。
このイベントは自国の食文化そのものを提案してゆき、そして多くの人が実感、また再発見できる。国内消費者がこのような地域の伝統食を再評価し、活性化することに意味があると考えます。主催者はベトナムの民間デジタルメディア運営企業・ベトセラ社が行ったもので、マスターカードと提携し、全ての有料イベントでキャッシュレス決済を導入したのがこの企業ならではのこと。
ユーザーが電子決済を行う機会を増やす目的もあるが、開催期間中イベントに参加する飲食店での決済がマスターカード利用ならば15%の割引が受けられるのもミソ。店側と客双方にメリットがあり、この時期として非接触型で安心できて好評だったとか。マスターカード側も世界でこうしたイベントを手掛けているようで主催者と理念が一致。COVID-19が収束すれば、食を通じて人との繋がりが元に戻る。知人や友人達と再び集う。そうしたことをこのイベントで貴重な体験として感じて貰うこと、故郷の味を認識すること、が基本コンセプトである様です。
しかし海外に市場を求めるなら戦略の立案、ブランド価値の創出、訴求・発信力などまだ弱いものが多々ある。
日本でも毎年東京で開催され、世界各国から食品企業の参加があった最大規模のフーデックスや、アジア諸国に的を絞ったフード・イベントが行われており、これに当社を始めとしてベトナム企業が参加した事があります。しかしこれはその国・地域で産する食品展示と商談を兼ねたもので業者向けの販促イベント。一見規模もさることながら、精々3日間で、参加料も高額。こうなると新興国企業は渡航費、出展料、商品運送費や関税負担など結構厳しものがありました。で、その成果となれば日本だけでなく、他の国で開催されるショーも殆ど参加するだけの意義しかなく、有機農作物を土作りから行うローカル企業の社長は参加したけれど、無駄だったと否定的。そこにはブランド力やベトナム製ということに対する信頼度の低さもありました。
しかし来館者はアジアの珍しい食品が試食できるので好評。ただそれだけの話。
*信じてはいけないグルメ記事 記者は記事の取材に金銭を要求する
ベトナムの新聞にも、日本の雑誌や新聞に掲載される様な人気店の記事が掲載されます。しかしこれにはカラクリがあって、即ち美味しいかどうかは別物。
単に記者の小遣い稼ぎにしか過ぎないが、こうした事例は実に多いのです。
その店に行ってみた。なるほど流石に客で一杯だが、取り立ててどうこういうものでない。しばらくすれば元の木阿弥に終わるだけです。実際に私が関与した現地レストランにもこうした記者が「売り込み」にやってきた。完全ヤラセ、嘘八百は直ぐにばれる。客はそんなに馬鹿舌でなく取り返しがつかなくなる。
・小売りと連携 地域農産品の販路拡大への試み
ベトナムでは伝統的小売り形態である市場や路面店でその日の食材を購入する割合が未だ以って高く70%程度だとしています。私の経験から野菜は少量でも(ネギはオマケ)、卵一個でも売ってくれるので便利なのはこの上ない。しかし朝はやたら早いが、暑くなる昼頃になると生鮮品を扱う店は閉店してしまう。
近年はスーパーやコンビニエンスストア、大規模マートが人気で、近所の人々は食事をしがてら、或いは涼みながら館内で買い物をする。何といっても沢山買いたい商品がある魅力。夜は遅くまで営業しており催事も盛んなので面白くてアミューズメント感覚。これがどんどん地方へ進出しているのが現状です。
かつてコンビニエンスストアは海外勢の独断場。現地企業と組んだが上手く行かなかったとか殆ど乗っ取りに近い洗礼を受けた事もあるが、歴史と経験則に拠る戦略に長けている日本企業、相手企業を信用し過ぎて裏切られました。
これに反し現地小売企業は戦略や運営ノウハウを殆ど持たず、何から手を付けて良いのか分らなかったと言っていい。また売り上げ至上で利益は出ないなど、経営的にみればマーケティング戦略を殆ど無視。無理を重ねて店舗開拓ばかり行っていた。意気込みだけでまともに事業ができるはずがなく、撤退したのがヴィンマート。現在は自動車造りに専念しているヴィンGの小売部門だったが、そこで言い訳もあるが、経営資源を車造りに集中するとしたのです。
これを取得したのがロシア留学仲間のマサン・グループの社長。お荷物とまで言われたのが見事に再生し、もはや海外企業勢よりも地場の本領を発揮した。どうやら風向きが変わり来て勢いが付いた模様で、近々に海外勢を上回るか!
この経過にはこれからも注目してゆきたいものです。
株式会社VACコンサルティング 顧問
(IBPC大阪 ベトナムアドバイザー)
木村秀生