ベトナム自動車産業 EV車販売開始と海外進出予定

2021年4月16日(金)

昨年のベトナム経済はCOVID-19禍でも健闘。過去10年のうちで最悪と言われながらも2,91%の成長であったと統計総局が発表。これは近隣アジア諸国に比べると極めて高い数字でした。また今年は7,8%になると早くも予測するイギリスの銀行があるくらい期待が大きいようです。
経済誌が報じるところ、今年1月は毎年改定される賃上げは無かったにしろ、ワーカーの平均賃金は680~830万VND、全国平均では740万VNDとなっていますが、20年程前は60万VND位、大卒者で日本語が出来ても100ドル(約150万VND)位でした。VNDベースで10倍以上になりましたが、それでも諸物価は高騰を続け一般市民の生活は一向に楽にならない。
しかし一方では、一部だが今年のテトのボーナスは企業業績を反映して日本円で最高2百万円を支給する所もある位、所得格差が急拡大して悲喜こもごも。
経済成長と共に、昨年度の自動車販売は総計407,487台であったと報告されています。20年ほど前の販売数はわずかに3万台程、個人では買えない高級品で財産。この数字は生活が豊かになってきた証明でもあり、今後は拍車が掛かる可能性が高いと考えます。

・自動車販売の概要

ベトナム自動車工業会の発表に拠ると、加盟企業各社が販売した昨年度の総数は前年比8%減の29万6634台。非加盟企業を加えると40万7487台となっています。
ブランド別ではトヨタのヴィオスが30,251台(7,4%)で一位。二位は現代・アクセントの20,776台(5,1%)、三位がビンファスト・ファデル(18,016台)と大躍進していますが、昨年初の発売です。*コラム197ベトナム自動車産業で、このビンファスト社製について書いています。
またメーカー別では、現代が81,368台(20%)と台数で初のトップになり韓国メディアは快挙と報じお祭り騒ぎだが、ベトナムTCモーター社の現地製造。二位トヨタ、72,136台(17,7%)。三位は起亜、チュオンハイ社(THACO)がノックダウン。この会社はマツダ、プジョーなども受託製造している。
韓国車は当初この起亜が多く、タクシーにも使われていました。しかし、よくエンジンが故障する、サスペンションが悪く乗り心地が悪い、エアコンが効かないなど評判はあまり良くなく、2000年に入って間なしにモーニングという1000CCの小型車を投入。日産マーチ風の結構売れた車がありました。価格は1万ドルとまあ無理すれば買えない値段でなかったのが要因の様です。

・ビングループ 今秋EV車を発売と現地報道

ビングループがこの5月にEV(電気自動車)の受注を開始すると発表した、と1月に報じられました。
発売する3車種全てがベトナムで好まれるSUV(多目的スポーツ車)となっており、国内では11月から納車する予定になっている。また国内市場だけではなく海外への進出を予定しており、アメリカ、カナダ、欧州各国でも注文を受け付け、来年2022年6月に販売を開始するとあります。
発売するSUVは、VF31、VF32、VF33で、VF31が電気自動車。
航続距離がフル充電時200キロ。
VF32、VF33の2車種にはガソリンエンジンと電動モーターを搭載した車となっているという。VF32はエンジンが189HP、フル充電で504キロを走行。プレミアム車のVF33は、最も大きく全長5,12m。エンジンが228HP、フル充電時に330キロ走行するという。
いずれもAI・人口知能を装備し、自動運転をアシストする機能が付いていると掲載されています。ただ、ハイブリッドなのか、ガソリン車と電気自動車なのか文章では判断し辛い。この2車種は9月に販売を開始し、2022年2月から引き渡す予定の様です。

現在のところ、この3車種ともに販売価格や予定台数は明らかにしていないが、大型車種では最大の航続距離は550キロとなっていて、搭載する電池は韓国LG化学社製を採用とあります。LG社は昨年ベトナムへ進出していますが、ビングループのお膳立てがあった様です。
因みに、現地報に拠るとサムスンに常に首位を渡し二位に甘んじているLG社のスマホ生産。ベトナムにあるスマホ生産工場をビングループに渡す予定だとある。ビングループは格安スマホをアメリカなどへ輸出していますが、これを強化して行く予定だとかで、両社の思惑が一致したという所でしょう。国内外
火を噴く事故が相次いだが、リチウムの安定性が製造課題として残っています。

またこのEV車普及のため、国内に3万~5万カ所という充電ステーションを整備する予定であったとするも、大幅に遅れていて見通しは立っていない模様。
普及させるために乗り越えなくてはならない絶対的な問題として残っています。
この所ビングループでは相次いで電気バス、電動バイクの開発が進み、ハノイ市では電気バスに代える方針も出ている程で今後の進展振りがどういうものになるか、生命線でもあり見どころです。

一挙に攻勢に出ているのは、2019年6月にハイフォン市で年産25万台の自動車生産工場を建設しており、この費用4000億円とも言われる。これを稼働させない事には昨年の2万台未満では償却はおろか赤字拡大。企業として成り立たない。初の国産車!と自負している政府にも示しがつかない。
国内で販売を開始して一年も経過しておらず、品質や性能が市場で評価されるには時間が掛かる。何処かに無理が生じていないか。昨年小売企業を譲渡したが、経営資源を保持できるか邪推してしまう。
海外進出ならば販路や整備メンテナンスについて何処まで相手国内でのルートが確保できるのか。企業ブランドイメージといい、知名度といい、また経験則が全くない所へ以って自動車先進国への進出は賭けに等しい。拙速すぎないか。

株式会社VACコンサルティング 顧問
(IBPC大阪 ベトナムアドバイザー)
木村秀生