ベトナムの労働時間 短縮の動きが出て来た

2026年5月27日(水)

日本では働き方改革とかで労働時間が短くなり、このところただでさえ生産性が低い中、さらに短くなるのならただでさえ人手が足りない以上に日常業務に、また一般消費者にも大きな弊害となり得る。確かに問題がなかった訳ではないから正当な考えなのでしょう。
そこで日本の運輸業界では例えばカンボジアに自動車学校を造り、そこで運転免許を取らせるとともに、日本の運転技術にマナーを教え、彼らを日本に招聘して日本の運転免許を取得させ、ドライバーを確保する窮地の策も出ている。海外で自動車運転の経験した人は分るでしょうが、怖くて現地ではハンドルを握る事は出来ない。一般論であってもマナーはとんでもなく悪くて万が一事故を起こすとなれば取り返しは付かない。そこで多くの進出企業は運転手付きのリースで対応しており中にはこれを事業にしている日本企業もある位。そこへ働いて×5と働き方改革を否定する発言を平気でする奈良の女が出て来て振り回されている日本。宣言した本人がストレス塗れで心身限界でヘトヘトの極致とはアホラし。我々の時代を考えると業種にも拠るが、深夜勤務や休日出勤でひたすら汗を流したのは強制でなく、家族を養い早く仕事を覚えたかっただけ。
またベトナムでも韓国などの企業はまさにこれを髣髴する様に働く人が多いという印象を持っていたし、海外での赴任期間など5~10年は普通なので日本企業は勝てない、なんて思ったことがある程です。

経済成長が続くベトナムだが、2000年前後は地場企業、零細企業や個人店など労働時間は長かった。これが普通であり賃金も決して高くはなかった。
ベトナムは東南アジアで労総時間が最も長く、休日・休暇の最も少ない国の一つだとされてきました。労働安全省に拠れば2019年の統計ではベトナム人の年間労働時間は2320時間とあり、11日の休日と12日間の有給休暇があって、これは全体としてアジアでは中央値かなと思える。
現行法では従業員に通常の条件下で一日8時間、週48時間まで働くことが出来るとなっており、残業は月40時間まで、年間200時間という制限がある。
但し衣料品製造、靴履物、水産物加工、電力、通信、電子機器等特定の産業は300時間までが上限、これは輸出とか外資企業を意識したものと考えられる。残業は50%の割増、休日出勤は100%、別の日に振り替休日をとることが出来るので、筆者が居た日系企業では残業させない様にシフトを組んで対応したけれど、元々長く働くよりも早く家に帰りたいという考えの従業員の方が多かったし、外資企業への監視は殊更厳しかったのです。また社会保険は要らないからその分現金でという人もいた位で少しでも金が欲しかった時代だった。

・週48時間労働はきつい 週40時間労働説が出て来た

昔のベトナム人は、と言っても2000年前後は、体は華奢で弱そうな人が多かったという印象が強い。これは戦後の栄養状態が良くなかったからであり、社会全体が貧困で働けど喰えず、貧しさを分かち合うことが美徳だったのです。
現地で結婚した友人の奥さんは自身が貧困地域の出身。だから子供には貧しい思いをさせたくないと牛乳を一日1リットルも飲ませるなど、食事はふんだんにさせていた。お陰で海外トップの国立大学医学部に進学したのには驚いた。
国内企業でも大手は長時間労働ではないけれど、地場の特に地方は酷かった。
2000年初頭など60万VNDで昼食付き、多分日本円だと5千円ほどか。
これでは幾らなんでも食えないし、外国人が来る食堂など朝は早く、夜は遅くまで。まして住む所が無ければ閉店してから店の床に茣蓙を敷いて寝る生活。それでもこれが当たり前という感じだった。また地方から都会に出て店を構えた村人を頼って行けば、昔の丁稚奉公と同じく寝食は付くけれど給料など無く小遣い程度、おまけに仕事以外に子供のお守りに家事労働一切をさせられて、これはまさに使役、逃げ出した人も知っている。こんな時代もありました。

地元ニュースにあったのが、ベトナム人の48時間労働で慢性的な疲労に追い込まれ、買物や旅行もできず、さらに医療費を使う事にも消極的になっている。
長時間労働は多くの従業員に仕事をして帰宅、回復してまた職場へという狭いサイクルで縛り付けている。休日は個人の健康とか買い物に向かうのではなく、ひたすら睡眠とか家族の用事の時間。こうなると消費は必然的に抑制されるとされ、本来流通するべき金員は留め置かれるとか貯蓄や投資に流れて、経済は活性化しないというのです。しかしそこまでエンゲル指数は高くない筈だが。
そういう状況の中で出てきているのが、週40時間労働への移行の論議とか。
しかしこの様な状況になれば、企業には金銭的な負担がかかるし、経済成長は鈍化してゆくとだろうとする消極的な懸念があるとします。
ところが反対意見もある。これは需要と供給、特に内需という観点からみれば労働時間の短縮は国内での消費や金が循環するという効果がある、即ち景気を刺激するという訳です。今やベトナムでは商品の供給は全く問題が無く、消費財から食品、自動車に至るまで潤沢でかつての様な不足することもなく、生産能力は充分にあってモノの価値は安定している。さらに旅行にしても航空機は誰もが使うようになったし、金を出せばリゾート地があって充分に楽しめる。
だから問題となるのは需要、収入が低いというのではなく、労働者が消費する時間にエネルギーが低いとしています。労働者が休息し、生活を愉しみ商品を購入することで生産~消費~再生産というサイクルが創出され、社会で機能、活性化するという訳だが、時間だけの問題ではないのに気が付いていない。

・40時間制に移行できるか

労働時間が長いというのが果たしてどうなのか。これは工場で働くワーカー、事務所にいて執務をとるホワイト職、あるいは役職者か役員なのか、それに加えて業種に拠っても異なる。また生産性はどうなのか、遅れている研究開発に従事する頭脳職、深夜休日でも働く人たちによっても違いがあります。
だが一般論として、もし40時間制が採用され、週休二日制が企業に導入されるとしたなら、可能性として消費パターンが大きく変わるし、時代が成長して社会や産業構造が三次産業に大きくシフトしているので正面から受け止めることが出来ます。
彼らの行動として毎日のショッピング、旅行などは平日の混雑が緩和され観光やサービスインフラの効率化ができる。また勤務時間が短縮されるなら家族が
病気になった時や日々のケアも時間が確保できるが、これは生産性向上に繋がる可能性もある筈。
企業にとっては業務の再編成、新技術の導入、管理形態の改善を促進しなければならないが、単位労働時間当たりの価値は高くなるとする。記事にはこれは安価な労働力、過酷な仕事に基く成長から抜け出す必要なステップとしている。
確かに地場企業や外資企業が現地生産する品目は靴履物、衣料など生産現場の労働環境は酷く、接着剤は揮発して臭いぷんぷんで、埃っぽかったが換気空調設備などなく我々は耐えられなかった。この様な状況であれば毎日ストレスに晒され病気になる公算も高い。だが充分な保険や従業員の福祉施策などがあるかと言えばそうではない。成長を続ける中で何時までもこの様な環境は続けば疲弊し、家族全体に及ばすマイナスの効果は成長の鈍化に繋がる。こうなると成長が続いたとしても長期的な社会的、人口動態への負担になるわけです。
政府や企業は国民の健康福祉を真剣に考えるべきで、また経済的戦略としても成長の原動力としても、明確なビジョンを持って労動時間に対する認識を持つ必要があります。
日本の企業でも昭和の時代は土曜半休が長く続き、変遷を経て欧米並みに休暇を増やす労働形態にすべき風潮から、今や週休3日制なども一部で採用され、労使協定で年間休日が設定されている。産業構造がこれから大きく変化、進化する中で何が正解なのか不明だが、世界第二の経済大国になったけれどその後はジリ貧でGDPドイツにも抜かれた。原因は様々にあるけれど、労働時間が減少したと言っても人口は増えない、生産性が低いのなら再生産や富の社会的な公平な富の分配など期待できない。一部の大企業だけが増殖するだけであり、また投資金融で資産が増えるのが現実。能力があっても社会全体として必ずしも正当な評価をされる訳ではない。この国、国民をどの様に豊かに安全で住みよい社会にするのか、理想や目標をはっきりと打ち出して貰いたいのだが。

・40時間制に移行できないのか

労働時間短縮について様々な見解がなされ論議を呼んでいるけれど、ベトナムでは世界的な傾向から外れ未解決なままとなっている。
最近仕事を受ける前に聞かれるのがこの労働時間に関してとある。殆どの外資系企業は土曜日の労働は基本的に廃止し、週40時間労働を標準としている。
それを見る限り効率が落ちているという結果は出ていません。むしろ安定したシステム、強い規律、持続的な生産性が確保できている傾向がみられます。
此の現実からすると、地場企業が時間を短縮する余裕がないというのは詭弁に近く、単にこれまでの慣習を惰性で続けてきただけで、問題は生産能力が落ちていないという結果です。ベトナムでは生産性をどのように上げるのかという核心部分について真剣に取り組むことなく、延々と無駄な議論を続けただけ。
労働時間を長くしても返って非効率で逆効果になる。組織や技術、行程の改善あるけれど、また労働力が安価で豊富にある場合、企業は自動化、機械化またデジタルシステムへの移行はコストが掛かり投資効率は良くない。しかしそうでなければ経済的観点からすれば生み出される価値はより高い。今では余計な仕事はAIやデジタル機器に置き換え、本来人間がするべき仕事を行う時代。
また労働時間が限られていると集中度が上り、一時間当たりの密度は高くなる。仕事を時間の量で計るのではなく絶対価値が上がることを知るべきで、企業は労働者に長く残って貰って仕事をするよりも、より短時間で多くの価値を創出できるようにする必要があります。こうなると間違いなく心理学の範疇となる。

・労働組合は週48時間未満に短縮する様に求めている

ベトナム連合は民間部門の労働時間を週48時間未満に削減し、公共部門では40時間にすることを目指している。という事は40時間労働云々よりも未だに地場企業にあっては長時間労働だという訳です。そこでワークバランス改善を訴え、政府に対して労働時間の部門間での標準化を求めているという。
統計によると、実際にベトナム人の労働時間は80年間、民間部門の労働時間は減少しておらずむしろ残業時間は3倍にもなっている。労働法の改正は幾度かあっても週48時間のまま。こういう状況を改善し、労使双方にメリットがあるとする労働時間短縮に加え、労働組合は労働者が子供の新学期に参加できるように国民の祝日を2日間延長する様当局が検討する事を求めているという。
1月には専門家や議員が長時間労働で疲弊する労働者の健康や、バランスへの懸念を理由にビジネス部門を40時間に短縮するよう提起している。
また労働法5周年の見直し会議では、労働安全衛生協会のチン教授から短縮のためのロードマップを法的に採用する様に促したが、着実に削減の方向に向かっていると現地報は伝えています。

株式会社VACコンサルティング 顧問
(IBPC大阪 ベトナムアドバイザー)
木村秀生