病死した豚を学校給食に提供 ハノイ

2026年6月19日(金)

日本では渡り鳥がやって来るシーズンになると、何処かで鳥インフルエンザが必ず発生します。養鶏場で2~3羽が死んでいるのを見つけた事業者から通報を受けた保健所は、直ちに病気にかかっていない鳥も含め全部の殺処分を行うこととなる。でないと近隣の鶏舎にまで移る危険がある。
普段から病原体を持った鳥が鶏舎に入ってこないよう慎重に二重三重の防止策を講じていても、何処からか入って来るようです。
もう10数年前のことだが、ベトナムでも此の鳥インフルエンザが流行して、大阪のある進学高が修学旅行を止めようかという事になり、現地の日系旅行社の担当が説明に来阪したことがあります。筆者の知り合いが偶々この旅行に行くとのことで、母親が大丈夫?と聞いてきたので、何の問題もないですよ、と答えたことがあります。ベトナムは衛生面で不安がられていたようだが、実際に村の人達は問題ないと食して居たほど。この落差の大きさとか一体何なのか、何処から来るのかだが、何の症状も見せないけれど売れないのなら喰ってしまおうという貧困思考か、勿体ない精神か。実際に食べても問題はないようです。

ところが3月末の現地社会ニュースに経済されていた記事には、今年初頭からアフリカ豚熱に感染した豚を処理して卸売市場や、クオン・ファット社という食品販売会社を通じて複数の学校に納入。学校では何も知らないままにこれを給食に使っていたとの報道がありました。これはまさしく確信犯、一時的なものではなく継続して約3600頭(約300トン)にもなるけれど、市民の口に入っていたという訳なのだから驚き以外にありません。
3月17日、ハノイの経済警察はハノイ市にある集中処理場へ捜査に入り検査を実施したとあります。この結果、グエン・ティ・ヒエンなる女がハノイ市内の業者やマーケットなどに豚肉を供給していたことが判明した。ヒエンと複数の関係者は近隣のフート省やトゥエンクアン省などで病気の豚と知りながら、集める闇のルートを形成。これを使ってハノイに運んでこの処理場内で肉にして市場へ出していたのです。
さらに問題、この犯罪はグループが複数の検疫担当者とグルになり、必要とされる管理過程を回避、これらの病気の豚はおろか死んでいた豚まで処理できるようにしていたことが分ったが、何とも気味の悪い話。こうして肉に加工して、何食わぬ顔であたかも普通の状態で持ち込まれた健康な豚だと言わんばかりに販売していたモラル無き会社の恐怖の実態が浮かび上がったのです。
ベトナムの田舎でマルマル太った豚を括り付けバイクで運んでいるのをみたり、写真をみたりしますが、筆者は家の近くで個人が飼っていて毎日この豚が道路で遊んでいるのを見掛けたことがあるけれど、此処もHCM市内のはずでは?
また多くの農家では食用に飼っていて、話のついでにと言っても尾籠な話だが、地方のレストランではトイレの真下に豚を放し飼い。音を聞き付けた豚がやって来て処理するという食糧循環型の生の現場を見たこともある程、この国では豚はポピュラーな動物。本来出してはいけない病気にかかった豚が肉になって提供されたのか、なんて思うと飼育環境や管理が悪かったのかだが、豚は不衛生を嫌い、清潔を好む生き物なので須らく人間の強欲さが問題。この食品会社、起業して13年になるといい、資本金20億VND、主な業務内容は食品の卸売り。従業員7名が働き、ティエンホン紙の調査では朝に車で食品を運んでいるとしている。幸いと言って良いのかだが、年初来3カ月間に人間に何らかの影響があったという様な報告は無かった模様。一般市場に出回った肉の追跡は難しいけれど、学校にこの会社が納入したとなれば記録を確認することは可能。しかし健康確認などは行なっていないようで、これはこれで不安を呼ぶけれど、何の記載もありません。
捜査を終えた警察は、食品安全規則違反の刑事事件として起訴する決定を行ったと発表。財産の権力と地位の乱用とかで食品の偽造を行ったとして、経営者のグエン・ヴァン・タイン氏ほか8人を起訴とあります。
明らかになったのは、このクオン・ファット社から食材の提供を受けたハノイ工業ケータリング・サービス社は、ハノイ市内の複数の学校へ食材として納入。
同社は不正の被害者であるとプレスに主張しているが、此処と契約をしていることを知った保護者の多くは健康被害を心配していると報じています。
同社に拠ると、別の畜産会社2社から安全な食肉の提供を受けていたけれど、実はこの2社からの提供は97%以上だとし、これは全て書類でも確認でき、納入企業の生産記録もあるという。だがコールドチェーンであるので、冷凍肉より新鮮な肉をという要望があったため、クオン・ファット社を二次サプライヤーとして加えたとしているのです。当初は何の問題も無く安全であるという当局が認可した食品安全証明書など幾つかの書類を確認したうえで契約したと話している。
僅か3%、要望に応えての結果、同社は不測の事態に巻き込まれたわけだが、冷凍でなく生の肉をという親切心が仇になったとの形で怒り千万。不正行為を助長する意図はなかった。すでに契約は破棄しており、必要であればいつでも提出された書類を公開するとしているのです。
ベトナムでも食品偽装は結構多い。誰もが好む豚肉を裂いて味付けしたものがある。これを何と段ボールを加工し、人工的に味と香りを付けた完全偽物まで流通させるのだから恐れ入ります。この他にも大豆を原料に使った偽コーヒーも作って販売しようとする輩もいて偽物つくりは後を絶ちません。

株式会社VACコンサルティング 顧問
(IBPC大阪 ベトナムアドバイザー)
木村秀生