シンガポールを離れイスカンダルへ マレーシア政府が推進する重点開発地域

2019年10月5日(土)

日系企業によるマレーシア進出の歴史は古く、1960年代が始まりです。現在、1,300社を超える企業が同国へ進出しており、製造業と非製造業がそれぞれ半数を占めています。近年では、非製造業の進出が増加しており、製造業を上回ってきています。非製造業の進出企業は、物流、外食、小売業など、業種がさまざまなのに対し、製造業では、電気・電子分野の企業が約4割を占めています。

2017年の同国への直接投資額を国・地域別に見ると、日本は、香港、中国に次いで第3位となる約61億リンギ(約1,540億円(※))でした。

※1リンギ=25.2円として算出

クアラルンプールとその近隣に集中する日系企業の進出先

日系企業のマレーシア進出先は、非製造業では首都クアラルンプール、製造業ではクアラルンプールと隣接するセランゴール州に集中しており、両地域で約66%を占めています。

セランゴール州の政府系外資誘致機関は、「電気・エレクトロニクス」「製造」など、特定の重点クラスターの投資誘致に力を入れており、同州では、工業団地が整備されています。
セランゴール州は、高速道路網が発達しているうえ、最先端の設備を備えたクアラルンプール国際空港や、マレーシア最大の港であるクラン港を擁していることから、物流面でもメリットがあります。

注目されるイスカンダル地域

マレーシアでは、複数の大型開発重点地域を定めています。中でも、ジョホール州のイスカンダル地域が注目を集めています。開発エリアは、ジョホール海峡を挟んでシンガポールから数kmしか離れていない対岸にある地域。総面積は東京都とほぼ同じであり、シンガポールの約3倍に及びます。2006年から始まった開発は、2025年までに完了する予定です。

開発地域の中心都市ジョホールバルの1人当たりのGDPやオフィス賃料は、シンガポールの7分の1程度。このため、外資系企業の中には、バックオフィスや生産拠点を、シンガポールからイスカンダルへ移転するケースが見られます。

日系企業では、Q&Aサイト「OKWAVE」を運営するオウケイウェイヴが2018年5月に、ブロックチェーンの開発拠点をイスカンダルに設置。IT技術者の単価が安いこと、シンガポールに近いことなどから、イスカンダルを拠点に選びました。同社は、現地にあるマレーシア有数の工科大学と提携し、ブロックチェーン技術の共同研究を行っています。さらに、大学ではブロックチェーン技術に関する講義を行い、優秀な人材の確保に努めていくとのことです。