下水道再生事業など 目に見えない裏方支援は日本がしている

2019年7月25日(木)

HCM市はかつてサイゴンと呼ばれ、植民地時代フランスが収奪した資源等の船積み地。僅か20万人の都市計画で整備を行いました。現在は人が増え公称で約900万人。実際には地方からの流入が続き、1000万人は悠に越えていると云われ郊外まで市域が拡大、密集化しています。
元々はサイゴン川の沖積地なので、殆どの地盤は弱く支持層まで数十メートル。地下工事で家が傾く危険もある。此処にODAで老朽化した下水管の入れ替え工事等が要所で行われますが、オープンカットなので日数を要し、一部で交通を妨げますがやむを得ません。また下水処理場が造られてから直放可能エリアが拡大しました。
一般にはどの様な汚水処理が行われているか。市中心部の古い家やレストランでも変わりませんが、二層式の処理槽を基礎工事の段階で素焼き煉瓦を組積しモルタル仕上げ、これを排水管に接続します。下水管が通っていればいいが、無ければそのまま何処かに流れて行く。しかし時間の経過と伴に汚水が染み出してくるが素焼では当然です。さらに古くなると崩れてしまい、管が詰まって全く機能しない。こうなるとお手上げ。一応は処理業者が居るが、費用が掛かる清掃などしませんからタチが悪い。
日本から何社かが進出してきて、家庭用の処理槽を現地で製造販売しており、これだと埋めるだけで工事も簡単。バイオの力でほぼ無害無臭になるのだが、値段が高い。従来の方法が安くてなかなか売れそうにありません。
環境衛生問題から法律で規制すればいいけれど、そんな気配は全然ありません。
土中に染み出した汚水が浸透し、大腸菌の数が恐ろしく多いのが実態。緩んだ給水管の接続部から入り込む可能性が高い。日本のように水圧が高くないため、一般家庭では上水は一旦地下のポリタンクで受水し、ポンプアップして屋上のステンレスタンクから落とす方式が多い。こうなると時たま土圧でポリタンクが壊れてしまうので一層危険です。
市当局も技術者を大阪に派遣、古い管の改修工事の研修を受けさせていますが、実効性はない。一昨年HCM市で開催されたアジア主要都市ラウンドテーブルに大阪市長が参加した際、在阪企業がビジネスミッションで参加しました。
この中の一社が特殊工法の技術を持っていて、経年劣化した水道管ライニング補修が出来るのです。JICAの依頼でベトナム人技術者を研修した事があり、現地を見て商機を確認する意味での参加。マッチングで水道事業を行っている企業やHCM市の担当部局にも行きましたが、関心はあるが結局は全てが資金と技術で行き詰まる。結局はインフラ整備事業としてODAが適するのではないか?との提案を行いました。
このほどニュースで報じられたのが類似の方式。会社は違うがJICAの支援でHCM市が採用したのは、既設配管の内側に塩化ビニール管を通し遠隔操作で膨らませるSPR工法技術。道路掘削と埋め戻しの必要もないため、バイクなどの通行に支障はない優れモノ。総工費22億円、内19億円は日本からの援助です。
下水管改修だけでなく日本はこの他に、各地で処理施設や浄水施設、河川水質改善などをODA無償支援。
首都ハノイ、世界遺産の観光都市ホイアンは下水処理施設。同じくフエ、港町ハイフォンは上水道。また北九州市なども水処理技術を活かし濁った河川を綺麗にする技術を提供、多くの地方自治体が支援を行っています。民間も様々な独自技術(納豆菌や酒酵母等々)を持って来ましたが、採用と実用化は難しい。

株式会社VACコンサルティング 顧問
(IBPC大阪 ベトナムアドバイザー)
木村秀生