ベトナムの諺④

2019年7月11日(木)

『父の恩いまだ払わず、母の儀いまだ償わず :Ong cha chua tra、Nghia me chua den』
遠く離れた都会で働き、着る物も構わず食べる物まで切り詰め、田舎の実家に仕送りする若者。君の行く道は果てしなく遠いが、夢を諦めないで。
政府は『労働力輸出』と称して外貨稼ぎ。自己を犠牲にして海外で働き稼ぎのない親を助け、弟妹に教育を受けさせるため努力する。能力があっても家計に余裕が無く上の学校に行けない無常。経済成長の反面、様々な格差や社会矛盾は拡大する一方。結婚後も親孝行は子の努めなど家族の絆は活きています。
 
社会生活やビジネスでは『馬に乗って花を見る :Cuoi ngua xem hoa』
花を見るには同じ高さで、ゆっくり眺めないと本当の美しさは見えてこない。
要は相手に目線を合わせないと真実や本来の価値を見定める事は出来ません。上下左右斜めから眺めるだけでなく、性格や思考、人生観は人によって異なり、知るためには内面に焦点を当て心眼で視るのが大切。
 
何れの世も『悪人ほど振る舞いが上手、無学な者ほど難しい言葉を使う :Xau hay lam tot、dot hay noi chu』。
口八丁手八丁でニコニコ夷顔。馴れ馴れしく近づき、あしらい上手な輩の儲け話は敬遠が賢明。
基礎や経験が無いのに知ったかぶり、グタグタご託を並べる調子のいいヤツは何処もでも居る。専門家同士以外での会話には専門用語やカタカナ語はやたら使わずシンプルが良いという教えです。
 
『壁に耳あり :Tai vach mach dung』噂が好きな国民性。公安やサッカー専門新聞等があり話の種に事欠きません。
『一人の口は閉じても9人の口は開く:Mot mieng Kin, chin  mieng ho』
貴方にだけよと言っても、話は簡単に漏れるので気をつけろ、ということ。
‘壁に耳あり+障子に目あり‘人の口には戸が建てられない‘は日本家屋ゆえの表現です。
余計な事を話してはいけない戒めは、『食べるのは一つの茶碗、言うは一言 :An mot bat, noi mot loi』 ‘沈黙は金‘‘舌は災いの根‘‘口は災いの元‘。見ざる 言わざる 聞かざるが身を守る万国共通の鉄則。口数の少ないのをIt Noiと評価します。だが言うべき事は言わないと意思疎通を招くが、空気を読む日本人との考え方の差は明確。
『借りる時はにこやかに笑い、返す時はすすり泣く:Vay ha ha tra hi hi』
借りるときは恵比須顔 返すときは閻魔顔と同じ。初めから貸してはいけない。貸すという事はあげると認識するべし。
 
『贈り物より贈り方 :Cua cho Khong banh chac cho』
『贈り物は小さいが気持は大きい :Cua it long Nhieu』

プレゼント大好きベトナム人。特に日本土産は綺麗でカワイイ、品質が良くて喜んでくれます。Small Present for youとかEnjoy it!とか言って、戴物をしますが中身よりも素直な気持が嬉しい。高価、高級な品物よりも相手への気遣いが大事。ですが‘花より団子‘が現実。
日本なら一生懸命自分で選んでも謙遜した言い廻しが美徳。貰った方は何かの機会にお返しを!と考えるのが社会的常道です。
ベトナム人は義理や体裁を重んじてお返しする習慣は無く、あれだけの事をしたのにと思うのは勝手な論理。何らかの反対給付を求めるなら見栄を張らずに始めからしなければ良いだけ。だが何かあった時は手伝ってくれるので忘れた訳ではありません。

株式会社VACコンサルティング 顧問
(IBPC大阪 ベトナムアドバイザー)
木村秀生