ベトナム日系工場建設奮闘記 ~ナカノアパレルベトナムNghe An 工場~【第13回 ベトナム人通訳者について】毎週更新

2022年7月21日(木)

DELTA ARCHI TECTS VIETNAM CO.,LTD.
代表取締役社長 三角照夫

 前回までのエピソードを読んでいただいている皆様は、私がベトナム語ペラペラ、英語もペラペラ、と思っていらっしゃる方もいるかとおもうのだが、実はそうではない。PC杭の検査の時にゲアン省出身の30歳男性を通訳で雇った。彼は実習生として日本へ行った経験もあり、日本の工務店で働いていた。という経歴を聞いていたのだが、私と一緒にPC工場へ向かう初めての通訳の車の中でローカルゼネコンのスタッフとベトナム語で話をしてばかりで、私にいまどんな会話をしていたのか、などは一切言わない。工場へ到着してからも、工場スタッフから説明を受けて自分は「うん、うん」と納得したようなそぶりを見せてはいるが、それを私に伝えようとしないので「おい、彼は今なんて言ってたんだ?」と、こちらから促さないと通訳しない始末。
 実際に実習生として日本へ行った経験があっても、実習生の多くの場合は仕事が終わって仲間と一緒に生活しているので、仲間との会話はベトナム語で会話をしている。だから日本語はほとんど覚えない。彼らが日本語を話せるのは挨拶と返事くらいだ。通訳者を雇う時に気をつけることは、日本語を話せるのは研修生で日本に行ったことのあるベトナム人。実習生と研修生の違いを理解しておくことが必要になる。だから工場から戻ってからそんな彼を速攻でクビにした。
 通訳者には日本語の理解も重要なのだが、それだけではなくセンスが必要だ。私がどんなことを言いたいか?どんなことを知りたがっているのか?これは日本語を喋る能力ではなくセンスだ、努力して身につくものではないと私は思う。
 そして工事が始まって約1週間後の2月15日から今度は女性の通訳者 Nguyen Thi Hueちゃんを雇った。彼女は Vinh市の隣の Ha Tinh という町の出身で、Zoom meeting で面接した時に会話のキャッチボールができ、センスあるなと感じたので、雇うことにした。
 実際、現場に来てから私が現場監督に指示を出す時や、各種チェックの時に現場監督に一歩も引けをとらず、物怖じもせずガンガン私が言った内容を同じように強い口調で伝え、指示をしてくれる、とても26歳とは思えない肝っ玉の座りようなのだ。さらに驚きなのは日本へ行ったことが無いというのだ。いくつかの日系企業で働いていたと言うことから、そこで日本語を覚えたのだろうが、センスがいい!
 もちろん建築に関しては素人だが、私の出す指示、仕事の進め方、質疑の翻訳などを行なっている内に、私の言いたいことや仕事の内容を理解した上で通訳・翻訳してくれているので、はっきり言って今ではローカルゼネコンのスタッフより優秀な設計監理、現場管理ができるくらいに育ってくれている。なんせ杭工事から竣工まで、私がやっていること全てを間近で見ているのだ。
 そんな彼女は以前、ホーチミンやダラットで働いていたのだが、両親から地元で働いて欲しいという希望に応えて仕事を探しているところ、今回タイミング良く出会えたと言うことなのだが、今ではこの現場にはなくてはならない存在となっている。

次回予告:いよいよ海開き!