ベトナムで映画などを撮影する話 インスペクターが付く

2020年2月23日(日)

最新作のベトナム映画「第三夫人と髪飾り」。若手で新進気鋭の女性監督が自身の曾祖母の話を元に描いた秀作。脚本も手掛け5年かけて制作したとのこと。
今どきCGを使う特撮が多く面白くない。アナログ的で人間の微妙な感性を表現できる実写は少なくなりましたが、ベトナム北部はニンビン省、世界遺産のチャンアンの富豪の家が舞台。美しい景色とは裏腹に古い父権社会のしきたりの中で翻弄される女性を描いた作品です。原作名はVo ba(三番目の妻)。男子生むのが務めとされた習慣は現在でも、特に北部に根強く残っているほど。
監督は谷崎潤一郎の作風に影響を受けたという位なので、作品にも強く影響が出ているとの評。ベトナムではわずか3日で上映禁止の命令が。日本ではR15指定なのでなんら問題はありません。だがベトナムでは違う。肌の露出度が高いとか、官能的と言うのはいくら芸術性が高くても通らない。
同じころ韓国・釜山での映画祭に参加したベトナム映画が賞を取ったけれど、出品の許可を得なかったという理由で罰金。出版や撮影、映画祭へも全て検閲され、修正したうえに許可が要る。こういう抑圧をするから裏に隠れて風俗やネットでの露出が盛んになるのです。お上の頭の固さと感性の無さは世界共通。
有名な話、此処でも大人気のドラエモン。しずかちゃんの水着にクレームが入り、ビキニはダメだとワンピースにしたなんてあほくさい笑い話もいい所。
ベトナムでは外国人が映画、TVのドラマロケなどのいかなる撮影も外務省のインスペクター(検査官)が同行する決まりになっていて、自由な行動はできません。本来は都合のよくない所や、撮影禁止の場所を撮らない様にチョックするなどが仕事。このインスペクターがいないと撮影や取材は絶対に不可能。地元の公安や公官庁との調整や許可は全て彼の手腕にかかってきます。
外国人が滅多に来ない所では地元住民が「怪しい」と睨んで通報すると、公安が飛んで来ますが、こういう事態も難なくクリアできます。
TVのドキュメンタリー番組があって、ロケハンと本番の二回、北から南の端カマウ岬まで同行する機会がありました。この際に国立公園の立ち入り禁止区域でさえも撮影は問題なくOK。軍のヘリも借りられる。経費は結構かかるが、安全かつスムーズに作業を進めるための絶対条件、保険料と思えば安いもの。
アメリカ映画のロケで監督とひと悶着、怒ったインスペクターが絶対権力を行使してロケを中止させたという話を前に聞きました。また許可が出ない時はよく似た風景がある外国の地を選びます。
オリバー・ストーン監督「天と地」はタイにて撮影。設定はダナン近郊の農村キーラ、実際には存在しない村です。しかし同じ熱帯の国であってもよく見ると風景の違いは自然と出てくるもの。なかなか見分けがつかないが、原作を読んでいてさらに土地勘があると、そのシーンはどの地域なのか特定可能なので画像の風景に違和感がある。
このインスペクターは何人かいますが、以前Hさんという日本語の上手な人が担当していました。彼が付けば通訳は全く必要ありませんが、実は我国でも唯一の専門学科、秋田大学鉱山学部の卒業生。こんな特殊能力があっても見合う仕事が無く、日本語を活かせるということでインスペクターになった次第です。隠れた能力があっても眠ったままの方、外国で専門分野を勉強した隠れた優秀な人財はこの国にも大勢います。これをどうして活かすのか、今後の課題です。インスペクターが居れば国内線の機材検査はフリーパス。ある時に出会ったのはNHKのクルー、大勢のスタッフと大量の機材を搬入。何を撮ったのか?
日数に滞在費にも充分余裕があるという製作会社のプロデューサーの話。そこまで贅を尽くした撮影は国民が払う視聴料。こんなに使う必要があるのという疑問は起こります。日本人の友人がオーナーの菓子会社。日本のTV取材の時、奥さんが「謝礼をいくら渡すの?」と心配して聞いてきました。インスペクターは誰?と聞くと、件のHさんという。ジャ、大丈夫と答えたのです。
ベトナムでは新聞やTVが取材すれば相手に取材費を請求するのが当たり前の慣習。レストランの評判記事もヤラセ、実際記事にするため入れ替わり営業に来ますから閉口です。この取材費請求は日本人会HCM盆踊り大会でも同じ。私の友人の記者が来た有力紙トイチェ紙やタン二エン紙は要らなかったがこれは特別。VTVは撮影後に請求してきたが基準などは無く目の子の算段、でお断り。取材に来てくれと呼んだ訳ではありませんが、彼らにとっては当たり前の要求です。

株式会社VACコンサルティング 顧問
(IBPC大阪 ベトナムアドバイザー)
木村秀生

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