今回の世界的な新型ウイルス流行で、企業が受けている影響は大きく、様々な業種・企業に及んでいます。特に観光、宿泊、飲食関係は何処の国でも息切れしそうな状況。この先どうなるのか判らない事ばかりです。
商品が売れなくて資金繰りが付かない、消費が以前の様に復活しないなどで、
倒産が増える可能性は、日本だけでなく各国でも起きる可能性が日ごとに増し、
戦々恐々の不安な毎日が続きます。
大阪の電気製品を製造していた企業。4月に突然の倒産の新聞記事に私は目が釘付け。寝耳に水とはこの様な事か!まさかと思いながら掲載してあった本社の写真を見ると紛れもなくK社。何度か訪問しているので間違いはありません。
この時点で最も大きな負債額だったとか。
この会社の会長とは比較的親しくさせていただいており、ネットなどに載る前、わずか2週間前にメールが来てホールディングスの会長を退いたが、毎日出社しますという内容でご挨拶の文章が認められてあったため、ホンマかいな?とビックリ仰天と言う次第です。
5年ほど前、大手銀行系のシンクタンクである総合研究所が主催したベトナム視察ツアーの一員として、会長がお越しになりました。
銀行としては融資に結び付けたいという思惑があり、企業にしても海外進出を模索している所。以前はインドネシアで催行。前回と今回ベトナムと言うことで当方がアテンドを行うことになったのです。前回が極めて参加企業から好評をいただいたというので、担当者から2回目も指名いただきました。実は系列のO銀行がその前に視察に来られており、この評価で小規模コンサルタントではあるけれど信用を頂いたという次第です。子細を省きますが、ローカルならではの特別な人脈から普段は訪問する事ができない地場企業を中心に、現地の真の姿をしっかり視ていただきました。
到着の夜90分ほど現地の実態を説明。最初に質問を受けたのがこのK会長。銀行の支店もお得意先の様でミッションの団長としてご参加、熱心です。
私も当地で電気の工事・販売会社をしていましたから、同社の造っている製品に関する現地事情を説明、今後のベトナム国内での利用状況等を述べました。また日本企業の製品を多く受託している地場工場にも案内、現地の実態と金型、及び製品製造工程をつぶさにご覧いただき、思いの外感心されました。
外国企業に工場内部まで踏み込んで見せてくれる所は多くないが、其処は現地の強力なコネクション。此処まで出来るコンサル会社は少ない。進出日本企業を訪問して経緯や苦労話を聞くのとは訳が違い有益です。
社内ではベトナム進出を考えているけれど、積極的な会長と慎重である社長・役員と合意されないままだったのです。
其処にベトナムで同種の電気部品を製造する企業を視察され、現地事情の詳細も分ったので一挙に話が進みました。同社では大手電機メーカーのOEM商品を造っていて、そのシェアも高いのです。
帰国後は進出を検討する役員の方々にも現地の実情を説明しました。財務に関してとか、売り上などは承知しませんが、最終的に決まったベトナムへの進出には納得の理由があり、また進出のヒントを逆に得たのです。
中国広州にも広大な工場があって、進出当時、周りは畑ばっかりで同社が日本企業第一号、パイオニアでした。会長は立ち上げからアパートを借り泊まり込んで尽力。かなり苦労された様ですが、これが日本人と中国人と結束の固さ。今になっても強いのが分かります。海外へ初めて進出するについて努力を重ねてきた心根が自分とも重なるのです。
会長の招きで創立記念の式に中国訪問。部品供給先の日系・中国企業を前に、初めて同社がベトナム進出を発表、併せて当方がベトナム事情と進出に関してセミナーを行ないました。現地では初めての模様、後から質問が幾つもあって関心は高いと感じました。
仕事柄ベトナム国内の工場を幾つも見ますが、この工場、整理整頓が行き届いており綺麗。しかも日系らしくラインが整備されていて、作業効率はかなり高いと観ます。気さくな会長、日本人スタッフは現地社員とも親しく、このためか従業員・工員の人も親切。良い製品を作るうえで大切なことです。
此処を内需向けの主力工場にして、ベトナムではこれまで生産していた海外向を造るという事業計画。中国国内にはその市場性があり、これまで培って来たノウハウを投入できると現地のY社長は話します。単なる移転とは違い合理的。この辺りの読み、中国法人の社長や管理職の何人かは日本の国立大学卒業者で優秀。両方の経済事情が分かるため決断が速い。自ら決断して行動する。一般の日本企業と大きく異なる、この姿勢は勝てないと感じました。
また地元のコネクションは強く、日系流通企業が広州へ進出する際に問題があったけれど支援し解決したほど。そういう交渉力に優れているのも大事な要素。早速工場用地を何カ所か視察、極めて合理的な適地を即時に決め。ライセンスを得る間、当方で経営しているレンタル事務所を借り、日本に居住するベトナム人スタッフを現地に呼んで通訳に当らせる。さらに建設事業に関しても手際のいい手続きでした。ベトナムへの中国企業の進出方法を垣間見た感じです。
工場も稼働。進出の過程や時系列での場面を記憶しているため、様々な要因はあるにしても、お手伝いした会社が2年ほどで倒産とは。辛い話です。
株式会社VACコンサルティング 顧問
(IBPC大阪 ベトナムアドバイザー)
木村秀生