ベトナム 中国との関係がより明確に

2026年10月21日(水)

・ベトナム建国記念日 & ハノイで特別な会議を全国規模で開催

9月2日はベトナムの建国記念日であり、またこの9月2日はホー・チ・ミンさんが1969年に亡くなった命日でもあって、ベトナム人にとっては神聖な日であります。
81周年目にあたる今年、世界各国のベトナム人が住む国と地域ではベトナム人コミュニティーと友好国と繋がりを示す大事な日、だと現地報は報じており、赤地に黄色い星が描かれた国旗が目立つところに掲げられている。
これらの国では祝賀の会が催され、地域の首長も参加して文化的多様性と社会生活に貢献してきたなど評価が高まっていると自賛。
僅か20年程前には日本国内にこれほど多くの在住者、また留学生が居なかったことを思うと、確実にベトナム人社会が拡がっているという驚きを持たずにいられません。
また翌日の3日には、建国記念日の浮かれを払拭するかの様にハノイで政治局と中央委員会書記局が全国大会を開催した、と現地報の政治欄は伝えている。
この会議にはマン元書記長、元主席、ミン現首相を始めズン元首相、国会議長に政治局員、さらに中中央委員から地方の各部局までの省庁、組織など現職・元職を問わず、また全国千カ所以上の拠点に370万人以上の幹部と党員が招集されたという大規模なものであった。では何故この時期に?と思うのだが、かつてこの様な会議があったかと言えば記憶に全くありません。
2月の共産党全国大会では党や国の進むべき方向性と方針が明確にされたけれども、この中で重要案件として挙げられたのがホー・チ・ミン思想の新発展期における道徳、方法、様式の基本内容の促進であり強化だったのです。
今回はこの様な思想に関して政治や行政に携わる者の綱紀粛正であり、現地報に拠る所では、政治局決議である、「新時代における幹部及び党員の開拓精神、模範的行動、革新、大胆な思考、行動および責任の促進移管する決議」の内容、また「海外ベトナム人に関する活動に関する決議」、「新時代における地域開発及び国家発展空間の組織化に関する決議」。そして今回の目的である幹部党員がそうした核心的内容、新たな論点、及び主要な課題を理解しこれらを実践的で実現可能、また効果的な行動計画やプログラムに具体化することを支援するためだとしている。そして党委員会、組織、指導者の責任が強化され、決議や支持が同期的に円滑に実施されて、新時代における革新的な目標と課題を成功裏に達成することであるとしており、さらに党、人民、軍隊全体に渡って団結と合意を形成、政治的決意と革新と創造の精神を鼓舞することが不可欠とした。要するに2月の全国共産党大会での決議への忠誠、権力集中と強化なのです。

・今年度8カ月間の輸出入額は過去最高 だが問題点やチグハグさも多い

9月2日に財務省統計総局が発表した今年8カ月間の輸出入総額は7,701億4千万ドルに達し、前年同期比28,7%増加したが、これは過去最高の数字とあります。内訳は輸出が3,747億7千万ドル、22,4%の増加、輸入は3,953億7千万ドルで35,3%増加したが、貿易収支は204億6千万ドルの赤字となりました。
ところが国内企業の外資系企業に対する輸出割合は、実に19%程度であり、この格差問題は増々拡大してきている状況が判明した。
また輸入は国内企業が1050億7千万ドル・23,7%増加、外資系企業では、2,902億3千万ドル・40,1%増加した。国内対外資割合は27対73。

また8月単月の輸出入総額は1,097億ドル、前年同期比では31,2%増加。
8月の輸出額は547億8千万ドルで、国内企業105億ドル、外資系企業は442億8千万ドルとなり、実に80%近くを外資系企業は占めており、この差は確実に開く一方となっています。

8カ月間の輸出品目をみると、加工・工業製品が3,379億9千万ドルに達し、90,2%を占め。農林では266億5千万ドルで7,1%。水産物80億ドルで2,1%、燃料・鉱物は22億ドルで僅かに0,2%となっている。
省で最も活躍しているのが北部バクニン省、145億ドルの投資を受けたが、これは韓国に近年は中国企業が此処に集中しているのが主要因。輸出相手先はアメリカが最大で、1,220億ドル・36,1%、と41%を占めた。

また輸入品目は、生産資材3,720億4千万ドル・94,1%で、この内訳は機械・設備・工具・部品が57,6%、原材料・燃料が36,5%、消費財は232億6千万ドル・5,9%となっています。
そして最大の輸入国は相変わらず中国で1,077億ドル・40,1%とある。

輸出を促進するために、政府は促進策と貿易強化の実施、品質向上のため生産とサプライチェーン、市場の拡大と多様化などを挙げている。さらにFTAの機会を効果的に活用、重要市場への拡大と黒字化を目指す。また企業が市場と資金にアクセスしやすくし、生産にはハイテク技術の適用で製品の品質と価値を高めて消費市場拡大を行って輸出を促進するとあります。
だが大きな問題はこの輸力は輸出企業の多くが外資系であり、この傾向は年々強くなっている。地場企業の生産・開発研究能力が停滞しているにも拘わらず、さらにFDI企業を熱烈に誘致しようと考えるのが根本的な大間違いです。

・経済記事に貿易赤字は200億ドル超えと記載 中国・韓国との連携強化

現地メディア各紙には、過去8カ月でベトナムの貿易赤字が200億ドルを超えたとのタイトルで記事を掲載していました。
これには先の内容を詳しく掲載し、中でも電子機器やコンピュータトその部品が最大の輸入品目で、8ヵ月間で1600億ドル超え、これは前年同期比では3分の2以上の増加。この分野での赤字が606億ドルになったとしている。
さらに中国からの輸入問題にも触れ、前年同期比40%以上も増えたとする。韓国も大貿易赤字国で不均衡状態は変わらないが、一方アメリカは実に1066億ドルも黒字を生んでおり、EUと日本に対して大幅な黒字を期待しているとの記事を掲載していました。だが根本的な解決には絶対になりません。
問題は如何にして大幅な赤字になっている原因を克明にして、これを如何に変えていくのかを考えなければならないのだが、この所、現ラム政権は中国との関係を緊密にしている。従がってラム書記長が習近平国家主席に2月に開催した全国共産党大会の結果を報告しに行った際にも、中国企業の進出、特に鉄道と南北高速鉄道の国家インフラ整備案件にほぼ約束をさされた様な状況。中国企業のベトナム進出加速という現象が現れ加速しているように思える。
この先中国との貿易収支を類推するなら、赤字額が屋上屋を重ねて来るように大幅な貿易赤字待質に変化はなく、如何に解消するか実に悩ましい限りです。
また韓国大統領をこの4月に国賓として招待し、原子力発電などの協力文書を締結している。貿易収支の大赤字を抱えるこの二国を今後どのように考えるのか明確にしていません。何時まで経っても黒字国と赤字国の状況は変わっていないだが、漫然と指を銜えてきているだけでは不均衡は是正されないどころか拡大する一方、これが全く分かっていません。対策も無く、輸出を増やすための方策ばかりでは限界があります。ここにベトナムが抱える貿易上での大問題があるけれど、見えない振りして尻隠さずとは嘆かわしい。ベトナムは韓国との経済協力関係をさらに強化するとして国会議長を訪韓させているが、一方で見えて来るのは日本をこれまでと違って蔑ろにする気配が濃く、強いと感じる。

・ベトナムと中国 投資協力を量から質へと転換 重要分野で連携強化

8カ月間の貿易実態がある中、ベトナム政府は両国企業の協力を単なる投資・貿易促進の拡大に留まらず、技術力や国内企業との連携、付加価値を重視した実質的で効果的な協力へと転換する方針を示した。中国企業はベトナムへ新規投資を拡大しておりインフラ、エネルギー、製造業に加えAIや半導体などの先端分野で連携が焦点となるとするが企業間能力格差が大き過ぎる。
政府の意向は単なる希望的願望であり、ベトナムは中国が投資と進出を望む様な形でしてくれるなど思わない方が良く、喰われるだけだと心得るべきです。

・ベトナムに対する中国の貿易と投資

8月にレ・ミン・フン首相は、ベトナムに投資する中国企業と会談したという。
7月までの越中間での貿易額は約1,843億ドルとなっており、前年同期比で35,1%増加した。さらに急速にベトナムに投資する中国企業が活発化して、850件、第一位となった。これまでの中国企業の有効投資案件は7,000件を超えるとされ、登録された投資額も370億ドルとなった。これまでの従来型の製造業からインフラ整備事業、エネルギー分野、テクノロジーなどの先進分野へと変化しつつあります。
これに関しフン首相は越中間の関係に触れ、積極的かつ安定的に発展しており、両国間での協力が一段と深化していると評価。そのうえで今後の経済協力の有り方については単純に投資や貿易を多くするだけでなく、より良く、より質の高い、より効率的で実質的協力を目指す必要があるとし、経済・金融の実務に通じた専門家の立場から考え方を示している。
首相は中国企業に対してより高品質な投資、先進技術を活用したプロジェクト、そしてベトナム経済へ波及効果が大きい事業を推進する様に呼びかけた。またベトナム企業との連携を強化し、両国経済発展のために相互補完作用性を活かす様に求めたが自国企業のレベルが其処まで行っていないのは先刻承知。一方中国企業は話を聞いてはいるが、聞く耳など持たず単なる通過儀礼に過ぎない。

・重点分野とは

ベトナムが中国に期待している重要な分野とは、これまでにも書いている様に越中間の鉄道案件であり、物流、クリーンエネルギー、AIに半導体、ビッグデータに新産業と盛沢山。そして国境ゲートでのスマート通関です。
ベトナムとしてはベトナムを中国の単なる生産拠点の一つではなく、インフラ整備案件を提供する事で、デジタル技術や先端製造技術を得て国内の製造業を高度化し産業エコシステムにつなげたいという思惑がある。
そのため手ブラでの投資・進出は認めないという国際ビジネス感覚があるフン首相の移行があると感じている。そこで地場企業との連携を持ち出している訳だが役者が違い過ぎる。そう簡単に中国企業が技術を移転してベトナムのためにサプライチェーン参入の助けをする筈などありません。先端分野への投資がベトナムの産業基盤変革や高度人材育成に繋がることを期待しているかに思えるけれど考えが甘い。先に人材を育成して、同じレベルで事業が出来るだけの状態を用意しておかなければ、2000年の初頭に日本企業がベトナム進出を拡大していった頃に近い状況にある可能性がある。さらに日本人と中国人とのモノの考え方に価値観が違うので、ベトナムとしては分かっているだろうが、同列に置いてはいけない。

・戦略強化へ 越中外相会談 だが本当に戦略はあるのか?

ベトナム外相チュン氏は、フィリッピンで行なわれたASEAN外相会議で、中国の王毅外相と会談と報じた。そこでは経済、貿易、投資、インフラ整備、科学技術などの幅広い分野で両国の戦略的協力関係について一層の強化と発展をする方針で一致した。しかし原材料や部品の供給を握られ輸出額は万年赤字。
恥も外聞文も無くフン首相が中国企業と会談して要請した同じ内容を中国政府代表にも繰り返した訳です。この中でベトナム外相は、対中関係は外交の最優先事項の一つと政府の意向を伝え。中国の経済発展モデルこそベトナムが共有するべきだと持ち上げた。即ちベトナムがこれから産業構造の転換などを行うため、自国、あるいは自国企業では出来ないと白旗をあげたのを同じで、ラム書記長の意向の通り中国との蜜月関係を促進したいとする意思を表明。さらに貿易不均衡でベトナムの大赤字を解消したいと中国の市場開放を要請し農作物の輸入拡大と事業環境整備を求めた次第。また人的交流を促進と持ち上げたが、まさに中国側の術に嵌る事であり、次第に情報・洗脳長期作戦が展開されます。
もはや軍門に下った、と考えても可笑しくはなく、今年8月までの大幅な赤字を出したベトナム。FDIは好調だが、外資系企業輸出が占める割合がすでに73%を超えたとなれば絶体絶命。何としてでも地場企業に活力を求めなければならないベトナムが中国に頼る形だが、軒先を貸して母屋を取られる可能性も。
この様な現地の事情を継続して見て行かなければ数字だけの判断は、如何にも成長を続けていると錯覚、真の実力でない木偶の坊経済力を過大評価するだけ。

・ロシアにもラブコールを送っている

ラム書記長は9月7日からプーチンの招待に拠るロシア訪問。両国関係に関してこれまでの長い戦略的関係を基に新たな分野での協力関係を拡大したい意向を示したと現地報が報じていました。
中国と同じ様にロシアを外交上での重要な選択として包括的パートナーシップは最重要であり、昨年外交関係樹立75周年を迎え、伝統的な友好的で政治的信頼がある。ベトナム戦争においても独立や国家建設に多大の支援を得て来たと評価。これが基盤となっている。こうした歴史上での両国間での深い関係をベトナムの成長力とロシアの技術により高度な発展を期待している。ロシア人観光客も太陽を求めて増えたが、人的交流も盛んにしてロシアとの対話に拠る新たな関係構築に向け、ロシアにも協力を得て行きたいのが考えだという。
ベトナムとしては自主、独立を基本としながらも何時も通りの全方位外交だが、ロシアとは取り分け重要な戦略的パートナーとしての位置づけをしていることを表明。今後はこれを発展させ、これまで要望していたエネルギー、また新たに宇宙も含め中国や韓国に求めている先進科学技術を拡大したいのが意向。

・IMF 2026年の成長率を8,2%に引き上げ

IMF・国際通貨基金はベトナムの8月の経済と外国直接投資状況から今年度のDDP成長率予測を8,2%に引き上げたとある。これは3月時点で発表された7,1%から1,1%引き上げた大幅な修正となります。
8月の状況からベトナムへのFDI投資は極めて良好であり、また政府の発表に拠れば外国人観光客の増加があり、1~8月に1,600万人に迫る勢いで、これは前年同期で14,4%の大幅増加であった。
こうしたFDIに貿易、公共投資も活発であり、またサービス関連部門が拡大したことでも経済が成長している一面があるとした。
このような背景があるから、成長分野を加速させる一方で、ベトナムは中国や韓国、ロシアにこれまでの関係以上に新規の産業分野へ支援と投資を求めているというのは早計過ぎる。
しかし同時に経済が好調というのは物価上昇、金融市場での株価や金利に影響がある訳で、これ等の安定にも対処しなければならない。1~8月間の消費者物価指数は4,45%上昇して、年間目標の4,5%の危険水域に近づいている。
成長が高度な発展段階にあるけれど、物価上昇も負けてはいない。となれば困るのは一般市民であり、給与所得が増えているとしても追い付かない。さらに都市部での不動産価格の高値続きと賃貸が並行して上昇している実情がある。
大都市周辺部や地方でも大規模開発プロジェクトが発表されているし、これに併せて都市鉄道計画など進んでいるけれど、ベトナムの一部コングロマリット企業が手掛け、こうした企業が莫大な利益を上げている状況にある。他の98%と云われる中小零細企業との格差は開く一方で、大半の人達は成長の恩恵を受けられないのがこの国の本当の現場の姿で貧困から抜け出せない。

・経済記事には書かれない問題点 曲がり角?

経済成長もいい、外国や外資系企業の投資や進出もいい。しかし貿易が好調としながらも、200億ドルを超える赤字を8月には計上している。さらに言うならば輸出に占める外資系企業の割合が73%にも及び、これが年々拡大してきたのは事実。要するに政府にしろ、地場企業にあっても、何ら手を打たずにこまねいていた。指を銜えて見ているだけに過ぎず、努力せず研究開発をしてこなかった。この企業姿勢は殆ど報じていない。
これまで書いてきたように、ラム書記長を始めフン首相、チュン外相は夫々の立場で友好国に支援を求め、技術協力に拠る地場企業の連携で国内産業を強化しようと試みているが、手の内をすっかり見通されていてお粗末な限りです。高等教育を充分に出来ず、高度な専門知識を持っている人材も不足して困窮している。何処にこの国が自力で発展できる要素があると思っているのか。

株式会社VACコンサルティング 顧問
(IBPC大阪 ベトナムアドバイザー)
木村秀生