ベトナムの企業を活性化する方策と 公共事業実施とデジタル化推進

2020年10月22日(木)

ベトナム企業に長く接してきましたが、ここ数年で随分進歩しているのは事実。だが歴史が浅く基盤が弱いだけに焦りは禁物。無理すると付け焼刃になるだけ。求められるのは明確なイズム、ビジネスセンス、自助努力。イデオロギーより成長するには何が重要か、もはや部品調達国を目指す上で明らかです。
事業環境を変革するためには、縮小されたとはいえまだ残っている国有企業や、他の国家資本が投下された非効率な公的企業との格差是正や廃止整理。さらに事業を継続するため国内外企業、個人を問わず被害を受けている、即ち未だに多くの企業が直面する賄賂の徴収、事業を行う上で改まらない理不尽な費用の支払い、公権力を乱用した私利私欲によるイケズ、嫌がらせの完全廃絶です。透明で公平性、正当性があり、誰もが納得できる悪弊の根絶が必要十分条件。
教育は大切だが上級管理職を育成する大学は教員の質が高く無い。行政内部での権力闘争と能力格差。家族・個人経営も提言を受け入れるだけの資質に欠けるなど、問題は山積します。

・有効な公共事業実施と改革への提言

周辺国が今年マイナス成長を予測している中、ベトナムは今年上期1,81%と毎月のプラス成長を維持。また今年は成長目標率を5%に置いていますが、達成はかなり難しいと思われます。製造業PMIは2か月連続で悪化。生産と、特に輸出向けの受注が落ち込んでいるとあり、先行きの回復目途は不透明です。
目標に近づくためには有効需要を活性化する大型公共事業を推進するのが一番。仕事を享受できる裾野は間違いなく拡大、多くの事業者が潤う事が可能になる。何処までやり切れるかは不詳としても、民間への発注が絶対的に不可避です。
この公共事業に関して、政府は経済的打撃から回復のため、下期は今年に予定されている公共投資の全てを実施する事に加え、昨年来遅延している事業との合計約280億ドルを実行するとしています。この思惑は社会インフラの整備に重点を置き、民間投資を刺激して成長の勢いを維持するためには最適であり、生産の促進と雇用が創出でき、経済効果が最も図れるとします。
インフラ整備は物流や開発の促進となり、経済が活性化する仕組みが造れます。
今回政府は、達成目標のため資金引き出しの徹底管理、迅速で正確な割り当てと支払い厳格化のためシステムを開発、データ管理を徹底すると意気込むが、果たして結果はどう出るか、やる気満々だが何とも言えません。

ベトナムのGDPの40%は民間の事業者と家族・個人事業者だと言われます。
政府は今年中に民間法人企業を100万社に増やし、2030年は200万社にしてGDPの60~65%を民間に委ねる計画とします。
これを実行するには行政の不適切な行為を排除するべきで、公正で透明な開示が等しく求められますが、これがなかなか出来ない。忖度や公然の秘密の漏洩は収まらず、一部の関係者が利益を貪る利権の温床になっている事実すら露見。あろうことか実際に国有企業の社長や人民委員会の委員長まで逮捕される始末。性懲りもなく繰り返される恥ずかしい実態がある。

・急速に進展するデジタル化 一層の促進は政府命題

管首相はデジタル庁を新設。我が選挙区の前科学技術相は80歳。頭は良いがIT音痴を露呈した。今回の高齢者内閣は大丈夫なのかな。
ベトナムは社会経済発展のため、ITやデジタル企業を2030年には10万社に増やす目標を掲げ、情報通信省はデジタル技術関連企業の発展を重要国家戦略として草案を公開しています。政府は経済を活性化し、持続的に発展させ先進工業国化を実現する為にはデジタル化が必要。デジタル企業が予定通りに成長すれば、GDPの20%を占めると目算。さらに2045年には高所得国となると明言しています。念願であるのはもの作り工業国だったが此処に来て、
即ち電子政府やスマートシティーを実現し、社会・経済のあらゆる局面で先端技術を応用する国家規模でデジタル化を加速的に推進する。このためデジタルの基礎技術を研究する企業、技術を応用した製造企業、技術や手法を提供する企業、技術を応用して新規に操業する企業を支援するとなっています。
2025年にはASEAN4位に、世界競争力をIT部門で40位にまで持って行く方針だが、すでに国内では疾病を契機にIT企業の活躍があるという。
今回の感染下で直接接触が限られたことが、国内のデジタル変革を躍進させる思わぬ切掛けとなり、IT利用の必然的に高くなったとも言えます。

政府関連ではベトナムポストが郵便番号システムとデジタル地図情報を組み合わせ、住所や正確な位置を即時に特定できる独自技術を開発したとし、物流やEコマースにも活用できるため時間と作業の効率化、コスト削減などに応用できると発表。民間でもオンライン会議のソフト開発に若手技術者が成功するなどの成果があるとします。急速にIT分野で目まぐるしい動きが出ているのは、海外で実務をした人材を帰国させ、起業のため10数年前HCM市郊外にITパークを開設した等がようやく実を結んだとも考えられなくはない。
現在、情報技術分野の企業は4万3千社、物流やIT関連、サービス企業1万7千社あると言われます。政府が本気でデジタル工業化を進めるなら、今後これらの企業に支援と研究開発への投資、法規制など適切な事業環境創りを行い、海外へ技術者が流出しない様に身分保障や賃金体系も整備する課題があります。

株式会社VACコンサルティング 顧問
(IBPC大阪 ベトナムアドバイザー)
木村秀生