新幹線計画復活か

2022年1月9日(日)

一旦は白紙に戻った新幹線計画。またぞろ復活しそうな気配となりました。
ベトナム運輸省は2021年~2030年の鉄道システム開発計画案を政府に提出したとの報道。これに拠ると2030年迄にハノイ~ヴィン、ニャチャン~ホーチミン市間の高速鉄道路線を整備する。このほか一般鉄路として北部でハノイ~ハイフォンなど4本、南部はビエンホア~ブンタウ、ホーチミン市~カントーなど3本新設すると言うもの。
ハノイ~ハイフォン間に路線はあるけど、とにかく遅い。過去ホーチミン市~ミトー、ニャチャン~ダラットには鉄道は敷設してあり、メコンデルタの産物をサイゴンに送り、サイゴン港からフランスへ出荷する政策的。ダラットへは宗主国フランス人の保養のためで、ベトナムの国益になるものではありませんでした。何れも廃線。
現在はトラック便で物流を主に担っているが、これを大量輸送する計画も含まれ、北のハイフォン港、ブンタウへなどへは工業団地が控え輸出をするための役割があると考えます。
新幹線計画はハノイ~ホーチミン間の直通でないが、これを2050年までに全線開通する予定となっています。
この2030年迄の整備計画では、投資額が240兆円(1兆2千億円)にも達すると試算するが、長期であること、これまでの地下鉄計画でも大幅な費用増加となっているため信用できない。またこの費用に関しては国の財源と民間資本に拠るとなっているが多分不可能。行きつくところはODAかBOT方式での調達になってしまう甘い気配を感じます。
高速鉄道を通すならやはり難所はトンネルでなければならないが、この試算は中々難しく、請負ではなく出来高制となってしまい、また技術的にも建設工事だけでなく運行システムまで踏み込まなければならず、これは前回の様に海外コンサルタントにしかできません。

以前の新幹線計画には日本のJICAと共同企業体が踊らされたが、その挙句に南北高速鉄道建設案は最終段階で中止。既存の統一鉄道の複線化計画を実施する事に変更となりました。既存鉄路は1000ミリの狭軌、新線は1435ミリの標準軌、これを並行させて建設とあった。これで新鮮を通過する列車は速度が160~200km/Hになる筈だったのです。
中止の理由は費用が掛かり過ぎること。だが普通に考えても採算など取れる訳など無いことは明らか。日本はぬか喜びに終わりました。

そもそも2013年に閣議で決まったが、費用の理由が疑問視され2013年に国会で否決されたのです。当時の首相の見栄なのか、日本への忖度なのか。
普通の常識が否決に持ち込んだが、誰が考えても無理からぬこと。人と経済の移動が無ければ飛行機の路線と空港整備をする方が理にかない、けだし正論。
だが、先の変更案も実施された試しはなく、老朽化した橋梁などの改修工事などを行う事で日本の商社がその任を受けたのです。
因みにこの2013年当時の新幹線投資額概算は5兆円だったかと記憶。この時分から考えても用地費、工事費用、労務費などは高騰しているため、当初の投資額などはやるためのシナリオに過ぎません。

またHCM市内で新幹線駅をどこに造るか。決まりもしないままに論議先行。
現サイゴン駅まで広い土地は無いが、当時筆者が住んでいたトゥドゥック区のビンチュウ駅近くに新駅ができると噂があり、此処は旧国道1号線Aと国鉄が並行して走っている周辺。丁度旧国道が拡幅改修工事中で、タンソンニャット空港へは真っすぐ結ばれるため、なるほど整合性があったが幻に終わりました。単なる期待感が信憑性を広めただけかもしれません。

こんな中で10月の現地報に拠れば、ベトナム国鉄は日本から無償譲渡される中古の気動車(ディーゼル)を37両輸入する許可を申請したとあります。
これはJR東日本が車両を更新する為であり、製造後約40年以上経っているので政令の規定により首相の許可が必要。それでも現在運行している車両よりも運転しやすく、一部を現在の鉄道に併せるため改造するとしても費用が安く付く訳です。それでも品質には問題が無く、電化されていないベトナム国鉄にとってはラッキーなこと。何という矛盾。
日本の車両はこれまでにタイ、インドネシア、ミャンマーにも寄贈され、ベトナムには神戸・鷹取工場から約20年前にも送られています。

ベトナム国鉄で使っている鉄道車両の殆どは東欧製。新型にしても同じで実際に乗ってみると、細部の出来は日本の車両を見慣れていれば雑。動けばいいという感じ。サイゴン駅~ニャチャンを走る新造特急でも同じで、これは観光用なので、ドア付近に大型荷物を置くスペースが確保されているのは便利だが、長距離を乗るための乗客への配慮は取り立ててありません。まして旧車両などリクライニングではなく、安いハードシートなど木製の椅子。トイレはレールが見えるなど。また単線で電化されていないし、とんでもなく遅れるのが普通。駅舎も設備も貧弱。こういう事態を先に改善するべきかと感じます。

以前のことだが、ハノイ~サイゴン間は一番早いS1でも37時間、他の列車も40数時間。実に平均速度は30キロ/H。今回の設計速度がどれだけなのか分らないが200キロ以上出しても約6時間かかる。費用対効果はいかほどなのでしょう。
そこで元日越経済交流センター創立者である人見さんは(旧国鉄時代から労組委員長)、廃車予定となるJR高速バスを送ろうと考え、元ベトナム国鉄トップに掛け合ったことがありました。実現しなかったけれど、これは当時高速道が無かった原因もあるが、国道でさえ舗装していなかった理由にも拠ります。

株式会社VACコンサルティング 顧問
(IBPC大阪 ベトナムアドバイザー)
木村秀生